未来の巨匠を探す。
これは、一種の冒険である。
企業に投資するとき、成功するかどうかは「経営者の資質」「ビジネスモデル」「成長市場の有無」といった要素で判断される。
アートの世界も、ある意味では同じだ。しかし、決定的に違う点がある。それは、アートの価値は「市場原理だけでは測れない」ということだ。
株を買うときには、財務諸表を読み、業界の動向を分析し、ライバル企業の状況を比較する。
しかし、アーティストには「財務諸表」も「決算報告」もない。では、何を基準に「これから伸びるアーティスト」を見極めるのか?
それには、3つの視点がある。
作品の「伸びしろ」を感じるか
新進気鋭のアーティストの作品を見たとき、今が完成形ではなく「これから進化する余地があるかどうか」を見極めることが大切である。
たとえば、スポーツの世界で言えば、10代の選手が世界大会に出場したとき、その選手の「現在の実力」よりも「将来どこまで成長するか」が重要視される。
まだ荒削りでも、光るものがあれば、その選手は数年後にスターになっているかもしれない。
アートも同じである。作品が完璧でなくても、挑戦的なアイデアや独自の視点が感じられれば、それは未来の巨匠の「原石」かもしれない。
アーティストに「続ける胆力」があるか
アーティストの成長は、その才能だけで決まるわけではない。むしろ重要なのは、どんな状況でも創作を続ける胆力、精神力である。
どれほど才能があっても、途中で挫折してしまえば、その作品の価値は伸びない。
絵が売れない時期でも描き続ける意志があるか。批判を浴びても自分のスタイルを貫けるか。流行に流されず、信じた道を突き進めるか。
成功したアーティストの多くは、単に才能があったからではなく、続ける強さを持っていたからこそ歴史に名を残した。
作品の良し悪しだけでなく、「このアーティストはどんな困難があっても続けていくだろうか?」という視点で見ることが、未来の巨匠を見極める鍵となる。
作品に「時代性」と「普遍性」のバランスがあるか
アートは時代を映す鏡である。だからこそ、その時代の空気を敏感に捉えた作品は評価されやすい。
しかし、一過性のトレンドだけに乗った作品は、ブームが終わるとともに忘れ去られる。
たとえば、かつて流行したファッションの中には、時代が過ぎると「昔の流行」として見向きもされなくなるものがある。
一方で、100年前に描かれた絵が今も感動を呼ぶのは、それが時代を超えた普遍性を持っているからである。
「今、このアーティストが評価されているのはなぜか?」
「10年後もこの作品は新鮮に見えるか?」
この視点を持つことで、一時的な流行に流されず、本当に価値のあるアートを見極めることができる。
アートは「生きた投資」であり、推し活でもある
一般的な投資と違い、アート投資には「育てる楽しみ」がある。
企業の株を買った場合、成長して株価が上がることは嬉しいが、自分がその企業に直接関わることはない。
しかし、アートを買うということは、アーティストを応援し、その成長を間近で見守ることでもある。
実際、コレクターが早い段階で作品を購入し、その売上がアーティストの制作資金になり、数年後にそのアーティストが大きく成長していく例は数多くある。
「あの作家がまだ無名だった頃から知っている」「最初の個展で買った作品が、今や美術館に展示されている」—— そんな喜びは、株の値上がりでは決して味わえない。
また、投資家が株式上場やM&Aによるキャピタルゲイン(利益)を目指すのに対し、アートコレクターは必ずしもそれを目的としない。
ずっと持ち続けて作品を愛でることもできる。いわば、推し活のような無償の愛を持ちつつも、歴史的なパトロンのようにアーティストの成長を支える役割も担うことができる。
だからこそ、アートコレクションは単なる投資ではなく、文化への貢献でもあるのだ。
未来の巨匠を探す。
それは、宝探しのようなものだ。
誰もが知るアーティストの作品を買うのも素晴らしい。
しかし、まだ誰も目をつけていないアーティストを見出し、その成長を共に楽しむことこそ、アートを買う醍醐味なのではないだろうか。
2025年3月14日(金) ~ 4月5日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日3月14日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:3月14日(金)18:00-20:00
※3月20日(木)は祝日のため休廊となります。
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F