ヤノベケンジ、小谷元彦、西尾康之… ダイナミックなスケール感と独特の世界観をもつ作家たちで知られる山本現代。 オーナー山本裕子氏に聞く時代を創るアートとは?
白金の閑静な住宅街の一角に知る人ぞ知るアートの殿堂がある。
5階建ての白金アートコンプレックスには、各フロアに分かれ計4つのギャラリーが入居する。 児玉画廊、ARATANIURANO、そして山本現代といった個性的な現代美術ギャラリーに加え、古美術を専門とするロンドンギャラリーだ。「複数のギャ ラリーが一箇所に集まっているので集客の面で非常に恵まれていること、そして現代美術だけでなく古美術も一度に楽しめるのが特徴ですね。」
そう語るのは、 2008年に神楽坂から白金に拠点を移した山本現代のオーナー山本裕子氏だ。まるで特定の概念を想起させる四字熟語のように、「山本現代」という四文字か らは、独特な作家のイメージが沸き上がってくる。環境問題や社会問題に大型ロボットで果敢に挑むヤノベケンジ、多様な手法と素材を用いて従来の彫刻の常識 を覆す小谷元彦、「エロス」や「タナトス」をテーマに粘土を内側から指で造形していく西尾康之…。
取り扱う作家の多くは、空間と一体化した立体やインスタ レーションを展開し、その世界観は一度見たら忘れられない強いインパクトを放つ。名称に「ギャラリー」や「画廊」ではなく「現代」という名を冠したのは、 アート=絵画・彫刻という決まりきったイメージを排除し、新しいスタイルのアートを提示していこうというギャラ リーの意志の表れでもある。
山本氏は、日本の現代アートが異様な熱気を帯びていた90年代にレントゲン藝術研究所に勤務していた。「当時のレントゲン藝術研究所には、美術関係者だけでなく、音楽業 界や文学界の面々、さらに占い師にいたるまであらゆる人々が出入りし、そこから村上隆やヤノベケンジ、会田誠など新しいアーティストが次々に登場しました。
倉庫を改装した巨大なスペースは、もはやギャラリーという枠を超え、驚くほどのパワーに満ち溢れていましたね。」当時のセンセーショナルなアートムーブメントを間近で目撃してきた山本氏にとって、ギャラリーが絵や彫刻を売る場所だという考えは、毛頭なかったと いってよい。
さらに、アートに対する考えもまた非常にアヴァンギャルドだ。
「たとえば、砂漠に400本のステンレスポールを立て、そこに雷を落とすだけのウォルター・デ・マリアの作品は、DiaArt Foundationのコレクションになっています。
たとえ「物」として存在していなくても、概念やコンセプトがあり、そこに作家の創意があれば、極端な話、それがたとえ「ゴミ」であっても、作品として成立すると思っています。そういうものを価値 付けしていくのがギャラリーの仕事ではないでしょうか。」時に公の場では躊躇されるような刺激の強い作品も発表してきた山本現代。
しかし、そんな挑戦的ともいえる姿勢がギャラリーに強烈な個性をもたらし、今や新たな衝撃を心待ちにしているコレクターも少なくない。
また、作家を選ぶ基準についてはこう語る。「美術の世界で完結するのではなく、ジャンルをクロスオーバーして活動する作家です。
たとえば宇川直宏みたいにデザイナーであり、VJであり、文筆家であり、なおかつアーティストでもあり続ける人。もう一つは日本独自の文化を持っている作家です。
日本の現代アートって何だろうと考えたとき、そこには多様な意味でのサブカルチャーの影響があると思います。他のジャンルを巧みに取り込みサブカルチャーとハイアートの境界線を自由に行き来する。そういったアーティストが後世振返ったとき結果的に残っていくのではないでしょうか。」
今後の展望について尋ねると「がさつな倉庫みたいなところに移りたい!」と声を大にして語る。
大き めのインスタレーションや立体作品が映える天井の高いスペースが必要なのだという。根っからのアヴァンギャルド精神を併せ持つ美しきギャラリストは、今後 もエネルギッシュな作家とともに新たな時代を創っていく。
Motohiko Odani「Time Tomb」
6.13–8.25Fotografiska
国際的に活躍する小谷元彦は、今夏はストックホルムにある美術館Fotografiskaで個展を開催予定。
写真:ODANI Motohiko《Light of the decade -Erasing memories to recall》2013 Video ©ODANI Motohiko Courtesy of YAMAMOTO GENDAI
山本現代
www.yamamotogendai.org/
東京都港区白金 3–1–15–3F
T. 03–6383–0626
11:00 –19:00 休廊日|日・月・祝
[次回の展覧会]
天才ハイスクール!!!!「 天才ハイスクール」
6月1日[土]– 6月29日[土]