アート作品の購入にはいろいろなエピソードが詰まっています。お気に入りの作家との出会いや、作品を購入するきっかけとなった出来事、また作品が届いてからの想いなど。今回はタグボート取扱い作家・渡邉富美子の作品をご購入された練馬のカッちゃんさまのエピソードをご紹介します。
練馬のカッちゃん 70代・男性・東京都在住 |
もう10年ほど前になるが「ハーブ&ドロシー」というアートコレクター夫妻を描いた映画があった。
出典:amazon.co.jp
夫のハーブは元郵便局員、妻のドロシーは図書館司書で二人の共通の趣味は現代アートの収集だった。彼らがアートを集める基準は2つ。一つは自分たちの給料だけで買えること。そしてもう一つはIDKの小さな部屋に収まることだった。夫婦は40年以上かけて2千点以上の作品を集め、世界有数の現代アートコレクターになった。この実在する物語をドキュメンタリ―映画に仕立てたのが「ハーブ&ドロシー」という映画である。
この映画の主人公夫妻の幸せな様子は映画でも十分感じられ、沢山の現代アートがまるでお二人にとって子供みたいだなと思った。私はこの映画を作った日本人女性監督が制作費を捻出するために行ったクラウドファウンディングにも参加した。パンフレットに名前を記載してもらうのが見返りだった。
私はこの映画を見て、もともと美術館大好きだったので、現代アートなら定年後の自分でも少しは収集可能なのではないかと思った。
そこで目についたのがタグボートだった。タグボートなら手軽に買うことができると思い今までに3点ほど購入したが、最近の購入作品は渡邉富美子の「the glow of the sky」だった。
その時同時に展示されていたのが「pink lake」だった。その静かなたたずまいも気にいったが、「the glow of the sky」は光に向かって歩く一人の人間を表していてポジティブな気分を与えてくれる気がしてそちらの方を購入した。
「the glow of the sky」渡邉富美子, 22 x 27.3 cm, キャンバスに油彩
「pink lake」渡邉富美子, 22 x 27.3 cm, キャンバスに油彩
気にいった点は単なる風景画ではなく「心象風景」を描くことで現代人の喜びや悲しみを切り取っている点であった。抽象と具象がミックスされたわかりやすさとシンプルな色使い。飽きの来ない感触と、もちろん私の懐具合とのマッチングがこの絵を買った動機である。
購入後に入っていた名刺は今も大切に保存しているが、そのメルアドにお礼を書くと早速渡邉さんから返信が送られてきたのも楽しい思い出である。
画像提供:練馬のカッちゃん