現代アートシーンに新たな1ページを刻むコレクション
日本屈指の現代美術コレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎氏。村上隆、奈良美智、会田誠、山口晃……。日本の現代アートを代表する名品 が一堂に会したコレクション展「neoteny japan」は、1990年代以降の混沌とした日本の現代アートに全く新しい定義を与え、大いに話題を呼んだ。これまで、心揺さぶられる作品を、ひたすら 購入してきたという高橋氏だが、自身のコレクション展を改めて見た時、日本の若い世代が、ようやく洋画・日本画という伝統的な枠組みから解放され、日本独 自の表現を獲得し出したことを実感したという。
現在も足繁くギャラリーや美術館の展覧会を訪れるという高橋氏。最近印象に残った展覧会は、森美術館で開催中の「イ・ブル」展だという。時代の変化や価 値観を自分の美学に取り込みながら作品に結晶させ、さらに作風を二重にも三重にも展開していく、日本人作家にはないスケールの大きさに圧倒されたという。
日本人の作家は、全体的に内に向かう傾向が強く、作品も私小説的なものが多い。さらに、最近の美大生の制作姿勢に対しては、言葉が多すぎるとも指摘する。 「人は言葉をなくして初めて絵を描く、現在の若い作家は描き続けることをやめてしまい、わかりやすい表現方法にすぐ移行してしまう。ひたすら描き続ける作 家が少なくなってしまった。」日本人作家に絞り込みコレクションを築いてきた高橋氏だからこそ、現代の作家に対する厳しく冷静な眼差しは、私たちの胸にも 重く突き刺さる。
1,500点以上に及ぶというコレクションについては、今後もキュレーターと組みながら、新たな切り口で発表していきたいと語ってくれた。次は、どんなセンセーショナルを巻き起こしてくれるのか、心待ちにしたい。