アート作品の購入にはいろいろなエピソードが詰まっています。お気に入りの作家との出会いや、作品を購入するきっかけとなった出来事、また作品が届いてからの想いなど。今回はタグボート取扱い作家・西川美穂さんの作品をご購入された佐藤豊明さまのエピソードをご紹介します。
佐藤豊明 40代・男性・奈良県在住 |
亡き祖父が油画の絵描きで、実家からの支援を受けながら活動していたものの、実家の事業が傾き支援を打ち切られた事で貧しさに耐え切れず筆を置いたという話を聞きながら育ちました。晩年に趣味として描いた油絵が我が家に数点あり、アートは身近な存在だったと思います。
祖父が生きた時代には現代アートという概念がほぼ無い時代で、ヨーロッパの印象派などに影響を受けた写実的な風景を切り取るといったものが祖父の作品といった感じです。
そういう環境で育ったせいか、これまで現代アートは敬遠気味でした。
TVなどで特集されていても、審美眼のある有名人が購入したというだけで価格が次の日から上がるといったような取り上げられ方にはあまりいい印象を持ちませんでした。
コロナ禍で家の中で生活する時間が長くなり、ちょこちょこギャラリー系のサイトを見るようになって、様々な画家さんのステートメントやインタビューを読んでいくうちに、自分の中にあった型にはまったアートへの意識が少しずつ変化してきました。
今回、購入させて頂いた「image」は新作一覧で目が留まりました。
恥ずかしながら、作家の西川美穂さんがピースの又吉直樹さんの芥川賞作品「火花」の表紙の装丁画を描いた方だという事は知りませんでした。
顔にコンプレックスを持っている方は多いと思うのですが、そこを塗りつぶしてしまえみたいな印象が気になったのだと思います。
西川美穂さんの記憶の変容の表現とは違った捉え方だったのですが・・・
唇が赤く塗られているので女性なのかなと思っていたのですが、西川美穂さんのHPで描き足す以前の作品を拝見して、男性だったのかなと思ったりしています。
色々と想像を膨らませてくれる作品でした。
「image」,西川美穂,27.3x 27.3 x2cm,キャンバスに油彩
西川美穂 |
佐藤豊明様
この度は多くの作品の中いち早くお買い上げ頂きましてありがとうございます。
また現代アートというジャンルの作品を選んでくださったこととても嬉しく思っております。
この作品はもともと描き終わった作品だったものに新たに絵の具を重ねた作品でした。一度完成させたのに改めて絵の具を付け加えたのは、月日が経ち自分自身が描いた作品なのに少しずつ忘れていっている自分がいて、このままこの作品を置いておくよりも違う作品にしたいという気持ちが芽生え、忘れていった自分の記憶を絵の具を置くことで完成させた作品です。
今回の作品は女性をモチーフにしていましたが、私にとって作品は見ている人の記憶の片隅にあるものを引き出し、私の考える意図とは違うものに変容していければ面白いなと考え描いているので様々なことを思い作品と対話してくださりとても嬉しかったです!
これからも対話できる作品を目指し描き続けたいと思います!今後ともどうぞよろしくお願い致します。