藤田さんの自宅の前に何気なく停められているのは、なんと1970年型のシックなメルセデス・ベンツだ。その他に1964年及び1967年型のロー ルス・ロイスも所有するなど、20年来のクラシックカーファンである藤田さんは、正真正銘の趣味人。昔から、どこか人と違うものが好きで、自らを「もの 派」*1と称するほど、「もの」に対するこだわりが強い人物だ。
アートに対しても、さぞかし入れ込んでいるのかと身構えてしまうが、アートを購入し始めたのは、4年前に友人に誘われたのがきっかけで、現在も部屋に飾れ る作品を中心に、インテリア感覚で楽しんでいるという。玄関では、クリスマスに合わせて、阪本トクロウの『クリスマスツリー』が出迎えてくれた。季節に よって、作品を掛け替えるという玄関スペースは、現代の住居環境における「床の間」的役割を果たしている。さらに、2階のお手洗いには、藤田さん自らが制 作したというポップなアートが飾られている。古着屋で、大好きな70年代のボーカリストがプリントされた紙袋を見つけ衝動的に購入してしまい、良い使い道 を考えた結果、額装することでオリジナルアートに仕立てたのだ。
ちょっとユニークなこだわりの「もの」に囲まれたライフスタイルは、藤田さんの個性そのものを表現しているようだ。アートもその一つとして、住空間に自然 に溶け込み日々の生活を彩っている。「日本は、アートコレクターのみならず、クラシックカーの愛好家も欧米に比べ格段に規模が小さい。どのようなジャンル であれ、もっと多くの人に「もの」を楽しみ、趣味に生きる喜びを知ってほしい」と最後に力強く語ってくれた。
*1 本文では、1960年代末〜70年代に展開された日本の美術運動を意味するものではない。