アート作品の購入にはいろいろなエピソードが詰まっています。お気に入りの作家との出会いや、作品を購入するきっかけとなった出来事、また作品が届いてからの想いなど。今回はタグボート取扱い作家・Ouma(オーマ)さんの作品をご購入されたjoeさまのエピソードをご紹介します。
joe 30代・男性・愛媛県在住 |
代表の徳光健治さんの著書を読んだことから初めてタグボートを見るようになりました。サイトに掲載されている作家さんの作品を日々の空き時間に見ていくのが半ば習慣のようになっていたある日、Oumaさんの作品に出会いました。
元獣医であるという経歴、そしてその経験から芸術で人や社会を癒そうとする考え方に興味を抱きました。ネット上で様々な作品を見て、そのコンセプトに触れて、その中で私が購入を決めたのがタグボートに出品されている「クラミドモナス」でした。
クラミドモナスは両面に絵が描かれた複数枚の木板から構成される作品のうちの一部で、集合した状態でも作品、個々の絵もひとつの作品となっており、社会と自身の関係性を表しているといいます。他にも売れ残った作品に「治療」を施し、購入される(=社会に適応する)まで新たな世代として生まれ変わらせていくという試みなど、その作品世界と制作コンセプトに深く共感しました。
アートも変わっていくことで社会に受け入れられていけるというところ、またクラミドモナスのように個としての作品と社会としての作品とが同居しているようなところなどを見ると、
「自分と同じように生きている。」
と感じて親近感がありました。そこに共感を覚えます。自分もまた社会の中で道に迷いながら変わってきたのと同じように「生きている」ように見えます。
自分自身や社会との対話の中で起こるどうしようもない葛藤といったことは、誰しも経験があると思います。そして、それによって人間が色々変化していく。そういったことを追体験させてくれて、そうしたものの上に今の自分があるということを思い出させてくれました。
そして最後には、作品の中でうようよしている微生物のようなものが、それで大丈夫だと語りかけてくるような気になって、彼らが愛くるしくもなり、そうするともう購入を決めていました。家に来た今も夜中にふよふよと動いていそうな雰囲気があり、アートを飾っているというだけでなく生き物を「飼っている」という感覚にも似たものがあります。
作品購入時は20代最後の数日を過ごしている時でした。そんな時にこの作品と出会えたことで、今までの歳月を振り返り、これで良かったんだと頷いて、そして新しいステージに向かって前進していけるパワーをもらったような気がします。
もちろんOumaさんの色々な作品やそれにまつわる文章を見た上での印象だということもありますが、ここまでインスピレーションさせること自体、改めてアートの持つ力は凄いと思わされました。
きっと今にOumaさんの作品世界が更に世に広まり、より多くの人に共感されるようになる日が来るだろうと感じます。徳光さんの著書には「投資としてのアート」という言葉もありますが、そんな日が来ても、手放したりしないで変わらず大事にしたいと思う作品です。
「クラミドモナス1/2」,Ouma,60x80cm,ペン、アクリル、廃木材
Ouma(オーマ) |
joe様
すごく丁寧に作品と対話してくださったことに、本当に本当に感謝しております!
自分にとって作品はまさに生き物と同じであり、生き死にを繰り返しながら世界を循環しているものです。
私は獣医大学の学生時代に、たくさんの実験動物の死に立ちあったのですが、彼らの死を別の動物の命の助けになるために使うのではなく、
亡くなった動物たち本人に還せるようになりたいと思っていました。
生き物が死んだ後も、その原子は地球上を循環しつづけます。
それであれば、彼らが再び生物の形を取った時に、彼らの生きる世界が幸せなものであって欲しいというのが私が創作を通じて最終的に目指しているところです。
現代では家族や職業、国籍、年齢、性別、常識などさまざまなステータスに縛られてしまうことがあります。
創作を通じて既存の関係性をつなぎ変え、縛りから自由になることで、自分にとって最適な関係性に結び直せるように。
そのようなコンセプトを作品に込めています。
クラミドモナスは作品の片割れでありながら、1点でも作品として成立している完全であり不完全な作品です。
一人では家族をつくれないけれど、血の繋がりがなくても家族になっていくことができる。
「片割れをもつ誰か」が存在するということがjoe様とその片割れを持つ方にとって、希望になってくれたら嬉しいです!
繊細に作品を読み取っていただけて本当にうれしいです、ありがとうございます!