額賀苑子は1989年神奈川県生まれ 、2013年東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。2015年に同大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程を卒業 しました。陶やテラコッタを主な素材として用い彫刻作品を制作しています。
空間で立体作品を「見る」ことにまつわる、実体と表層、意識と無意識、ペルソナとアニマなど、相対する二つの価値観。作家はそれらに注意深く切り込み、目の前にあるものの不確かな感触を掴み取ろうとします。
立体作品を見ることにさまざまな角度からアプローチする、魅力的な作品をご紹介します。
額賀苑子 Sonoko Nukaga |
見つめあう彫刻
tagboat Art Fair 2022 展示風景
大きなサングラスや水中眼鏡に、外界の景色を映し出す二人。よく見ると、その目線の先にあるのはお互いの姿のようです。
作家は「人体彫刻と鑑賞者の間にある隔たり」に着目し、彫刻が置かれた状況を作品に内包させることを試みています。
本来見つめあうことができないはずの二体の彫刻は、まるでお互いが向かい合うかのように空間を伴い、関係性を持った彫刻として私たちの目に映ります。
陶・金彩・透明樹脂, 62x 55 x49cm, 2022
陶・金彩・透明樹脂, 62x 55 x50cm, 2022
陶・透明樹脂, 326x 319 x187cm, 2022
SOLD OUT
視点をずらす
not clear 02
インターネットで簡単に図像を手に入れ、実際に見に行かなくても知ることが容易になった現代。しかし、写真から想像したものは本当に思った通りの形をしているのでしょうか。
作家はこれまで立体作品でありながら、ある一点から見た時だけ立体的に見えるように、「正面」が像を結ぶよう作られた作品を発表してきました。
縮尺を歪ませているため、鑑賞者は側面から作品を見たときに予想外の平たさを持つことに気づきます。
テラコッタ, 36x 97 x63cm, 2015
テラコッタ, 76x 60 x55cm, 2015
not clear 01 側面
内面と表皮
tagboat Art Fair 2022 展示風景
「見る」ことの固定観念がはらむ、様々な矛盾。素直に見ているようでも、視覚は実体との間に差異を生んでしまいます。
彫刻の凹凸を曖昧にしたり、形態と表皮がズレているような描画を施したり。視線が持つ矛盾を突き崩し、あえてぼかしたり、ずらしたりするような表現を加えることで、作家は新たな作品の見方を探ります。
作品を「見る」ことの中にある様々な隔たりについて問いかける作品を、是非実際に展示会場でご覧ください。
セラミック, 67x 59 x42cm, 2021
陶, 65x 32.9 x34.5cm, 2021
セラミック, 68x 45.9 x42.5cm, 2021
SOLD OUT
額賀苑子 Sonoko Nukaga |
1989 神奈川県生まれ
2013 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2015 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程卒業
2011 久米桂一朗賞 受賞
2013 安宅賞 受賞
「New Artists 2013」Gallery Jin Projects(東京)
2014 「Art jam 2014」Gallery Jin Projects(東京)
「ジ・アートフェア +プリュス – ウルトラ 2014」スパイラルガーデン(東京)
2015 アートアワードトーキョー丸の内 審査員:建畠晢賞 受賞
杜賞 受賞
「ジ・アートフェア +プリュス – ウルトラ 2015」スパイラルガーデン(東京)
「人像 Part.1 Form〈形態〉須崎祐次×額賀苑子」エモン・フォトギャラリー(東京)
「アートアワードトーキョー丸の内 2015」丸ビル 1 階マルキューブ(東京)
「Duet series vol.3 額賀苑子・天明里奈二人展」Gallery Jin Projects(東京)
「3331 アートフェア 2015 – Various Collectors’ Prizes -」3331 Arts Chiyoda(東京)
2016 個展「not clear」/Gallery Jin Projects(東京)
「3331 アートフェア 2016 」3331 Arts Chiyoda(東京)
2018 「九転十起生 – 広岡浅子像」大同生命保険株式会社 大阪本社ビル(大阪)
「陶×藝×術」FEI ART MUSEUM YOKOHAMA(神奈川)
2019 「内包された温度」東京藝術大学大学美術館(東京)
個展「紗のむこう」Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)
2020 TAGBOAD AWARD 特別審査員賞 小山登美夫賞 受賞
陶やテラコッタを主な素材として用い、実体と表層、意識と無意識、ペルソナとアニマなど相対する2つの価値観を行き来するような造形を目指し制作しています。人として生きていく上で抱えざるを得ない矛盾やズレへと向かう表現を人体という古典的、かつ普遍的なモチーフを用いて探求しています。空間や質量の中に歪みやズレを取り込みながら制作することで彫刻という実存感が強いメディアに曖昧さや割り切れなさを含ませようとしています。鑑賞者が正面を探し、不安定に立ち上がる立体の周りを歩き回ることで、「存在する」ことと「見る」という行為の間に横たわる断絶について思索を巡らせるような表現を試みています。