イラストレーターとしてそのキャリアをスタートし、近年はアーティストとして油彩画を中心に制作する長嶋五郎。
雑誌「POPEYE」の表紙やTOYOTAカローラのCMなど、雑誌から広告、アパレル、音楽関連、TV番組を中心に幅広く活躍してきました。
絵に興味を持ち始めた幼少期から現在の表現にいたるまで、詳しくお伺いしました。
長嶋五郎 Goro Nagashima |
作品を作り始めたのはいつ頃ですか?
父親が美術教師で作家活動もしていた事もあり、幼い頃から美術館等によく連れていかれました。しかしその当時の上野の美術館での展示等は昭和の暗いトーンの作品が多く楽しい思い出という感じではありませんでした。
小学校の夏休みの自由研究でプロレス技を紙粘土で何十体か作り賞をもらったりしましたが、次第に暗いトーンの絵を描くようになっていったと思います。
美大を卒業してデザイン事務所で働いたりと紆余曲折ありながら30歳くらいの時に腰を据えて絵でお金を稼ごうと思い本格的に描き始めました。
デザイン事務所、個人でのアパレル、バーテンダーと20代で色々やってみましたが長く続くものではないと気付き、ずっと続けていけるものづくりをしっかり始めようと思いました。
アーティストを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?きっかけはなんですか?
20代の頃に働いていたギャラリー兼飲食店(P-house)でチャップマン兄弟の展示やマイクケリーのパフォーマンス、お客さんで来ていたイルドーザーの活動等を見ていて憧れがあり、当時細々と絵を描いていましたがいつかは自分もと強く思っていました。
作風が確立するまでの経緯を教えてください。
美大では短大油画のコースだったので予備校、短大学生と3年程油彩画を描いていましたが、社会人を経て水彩画や線画でイラストレーターとして活動しています。そこでイラストレーターとしてだけでなく作家としてまた油彩画に再び取り組もうと決意し、水彩画の様な雰囲気でサッと描いた様な絵かナイフで盛り付けた重厚な絵か試行錯誤して重厚な絵の工程が自分の感情を乗せやすいと思い現在の絵柄になっています。
作品を発表し始めたのは何時頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
コロナウィルスが蔓延し多くの物事が停滞した時にイラストレーターとしての依頼も滞り、時間も出来たし以前から考えていた〝自分のための絵を描く〟という事に取り組みました。そして2020~2021年頃からSNS等で発表していきました。
アーティストステートメントについて語ってください。
いままでを振り返ると自分が好きだった音楽やカルチャー、芸術等がアメリカ西海岸発祥とされるものが多くその中で自分が10代の頃に最初にビジュアルで影響を受けたのが古着や中古レコード等の〝経年劣化した有機的なグラフィック〟でありそのオマージュとしてのキャラクターを描いている事と好きなミュージシャン、アーティスト等がインタビューで応えている傍らにあったハンバーガー等のスナック類をアイコンとして捉え画面に加えます。
それと昔観た朧げな記憶の映画の中のあり得ない色をした山と四角い画面に三角を描けば成立するミニマリズム的な要素で山を描いています。
作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
キャンバスを張り、下書きはほぼせずに背景を抽象的に塗っていくか、一つのトーンで塗るか決めてから主題となる物も描いていきます。色味等の様子を見て何層か重ねていく事もあります。基本的には絵の具のチューブをそのままキャンバスかペインティングナイフに出してそのまま描いています。
作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
大きめの作品を描くときのスペース作りは苦労していて、いつも片付けてどうにか場所を作っています。
極力、自分でキャンバスを張るので大きなキャンバスだと歪まないように組むのが大変ですね。
今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
具象と抽象の間の雰囲気の絵を描きたいのでそういう雰囲気の表現の仕方と最近使い始めた油絵の具で使ったことのない色や混ざり具合等、いま使っている画材での表現の幅を知る事。アプローチやブランディング等も勉強していきたいです。
長嶋五郎 Goro Nagashima |
東京生まれ
武蔵野美術大学短期大学部美術科卒業
イラストレーターとしてキャリアをスタートさせ、雑誌「POPEYE」の表紙やTOYOTAカローラのCMに参加、TV番組「激レアさんを連れてきた。」コーナーイラストを担当等、雑誌から広告、アパレル、音楽関連、TV番組を中心に活動。
2020年頃から自身が影響を受けたの80年代の〝有機的なグラフィック〟をテーマに厚塗りの油彩画を学生以来20年振りに取り組む。
主な展示にOIL by 美術手帖ギャラリー「NEO PAINTING TOKYO」(グループ展)、YUGEN gallery「Thick Layer」(個展)、3331 Arts Chiyoda「WAVE TOKYO 2021」(グループ展)