独自の視点で切り込む美大出身コレクター
美術大学の工芸科で金工を学び、大手高級ジュエリー企業のデザイナーを経て独立、現在はジュエリーブランドのコンサルティングやディレクションを手掛ける一方、自らのジュエリーコレクションを国内外で発表している。
幼い時から、京都の祖母の影響で美しい着物柄に魅せられて育ち、パリやロンドンを訪れれば、夜明け前からアンティーク市に繰り出す。そんな西澤さん が、本格的にコレクションを始めたのは、3年前からだという。
それまでは、インテリアとして部屋を飾るお洒落なアート作品が欲しいという思いはあったが、 一体どこで購入できるのか見当もつかなかったそうだ。しかし、熱狂的なコレクターの友人に連れられ、様々なギャラリーを巡るうちに、次第にその魅力に開眼 されていったのだという。2009年、初めて訪れたアートフェア東京では、カタログから自分のテイストに合ったギャラリーを全てピックアップ、最新の展覧 会情報を送ってもらうため各ギャラリーに住所登録を行った。それ以来、定期的にギャラリーに足を運び気に入った作品や作家との出逢いを楽しんでいる。
自らも創り手である西澤さんは、作品に対しても人一倍真剣な姿勢で挑む。自らの意見や感じたことは直接アーティストに投げかける。しかし、鋭い指摘や的 確なアドバイスは、特に若いアーティストたちに刺激を与え、逆に強い信頼関係を築くきっかけともなっている。
「作品を通して、社会の深層心理を突いたアー ティストの考え方を知る事で、そこから今という時代が見えてくる」と、アートの魅力についてそう語る西澤さんは、「メッセージを発信し続ける優れたアー ティストの存在は、社会にとって必要不可欠であり、欧米のように日本でも文化人・知識人と呼ばれるような富裕層は、作品を購入することで、その活動を支え る必要がある」とも語ってくれた。
自身のキャリアに裏打ちされた強い信念と独自のものの見方で、日本の現代アート界を突き動かす心強いサポーターの一人だ。