「元々写真が趣味で個展を開いていたことや、美術館の企画展にはよく行っていたので、アート全般には興味がありましたが、今のようにアートをコレクションするなんて思いもしませんでした。」
そう語るのは、印刷やウインドウディスプレーの会社を経営する鳥越貴樹氏。最初にギャラリーでアートを購入したのは、今から約3年前。その時は、ただ自宅 の壁に合う作品を探して購入しただけで、その後もアート作品を収集し続けようとは考えていなかったという。しかし、2年前にとあるギャラリーで新田友美の 作品を見たときに状況は一変してしまった。思わず一目惚れした作品だったが、購入を思い悩んでいるうちに他の人に売れてしまった。その出来事が原因でアー ト収集への思いに火がついたのかもしれない。その後しばらくして、ギャラリーから同作家の作品を紹介された際には迷わず購入を決めた。すでに飾っている作 品の掛け替え用に30号、さらに飾るスペースの無い100号の作品まで購入してしまったのだという。
あくまでも作品は住環境と溶け込み、生活の中で自分に刺激を与えてくれるものと思っているが、自分が気に入った作品がいつか海外の美術館などに貸し出さ れることを夢見て、作家の成長に期待しながら作品を購入するのも楽しみの一つだという。そして、そのような楽しみ方には、共感し信頼できる審美眼を持った ギャラリストの存在が不可欠だという。
最近では、平面作品から立体、ビデオなど幅広いジャンルのアートを購入するようになった。しかし、特に現代アートにこだわっているという訳ではなく、い つかはジョゼフ・コーネルの小箱のような作品も所有してみたいなど、自由に思いを巡らせながらアートと付きあえればと思っているそうだ。
コレクターとして日本のアート市場の成長にも関心を寄せる鳥越さん。
「まず、アート市場が活発にならないと作家活動を生業とするアーティストが伸びな い。」その一方で、アートの購入については、「最初の1点目から次の2点目へのハードルを乗り越えることでコレクションの醍醐味を知ることができる。」と 語り、今後さらにそういった人たちが増えていくことを望んでいる。