デザイナーやブランドプロデューサーとして幅広く活躍する八巻多鶴子さん。
幼いころからファッションが身近にある環境に育ち、80年代からは多くの一流のアートを見てきたと言われる通り、招待されたご自宅には、180度に広がる窓からの景色をバックにアフリカの雑貨から最先端のアートまで洗練された作品に囲まれた空間があった。
ファッションデザイナーである永澤陽一氏のパートナーとしてパリコレクションに発表するなど、これまでも実験的なものづくりを行ってきたが、その中でアートとファッションにはどこか似ている部分を感じていたようだ。大衆を動かすための最先端の感性がモードには必要であるが、そのモードよりさらに進んだものとして現代アートを捉えている。そして、アートを自分の生活の中に溶け込ませていきたいと考えている。アートをコレクションするときは、カテゴリーを特に意識することなく部屋に飾って安心できる作品を選ぶようにしている。とはいうものの、突発的に思いつきで買うのではなく、アルチザン(職人)的なテクニックであったり、アイデアの面白さというものを重視している。
当然、仕事もアートに影響を強く受けている。一流のアートを見ることは仕事へのインスピレーションをかきたてるものである。例えば、自然科学博物館などからインスピレーションを受けたこともあるし、アンデルセン美術館の切り絵技術に影響を受けたこともあった。また、アートを通した教育にも興味を持っており、本物のアートに親しむことで子どもが想像力を養い、右脳を鍛えることにつながる教育が今後は必要になると考えている。
アートとは、人生を幸せにしてくれるものであり、仕事へのビタミン剤でもある。