父が書道家だったことから、家の中は常に書や骨董が置いてある環境であったが、特にアート好きということではなかった。しかし、東京都現代美術館が近所に開館したときに珍しさで行ってみたところ思いのほか面白かったことで、年に数回は展覧会を見るようになった。さらに自宅から徒歩5分のところに清澄のギャラリーコンプレックスが出来たことで、頻繁に足を運ぶようになり現代アートの魅力にどっぷりと浸かっていくこととなった。
初めてアート作品を買ったのも、やはり清澄のギャラリー。実のところ、無料で作品が見られる美術館のような気分で通っていたのだが、そのうちに「これらの作品は実は販売されている」と気づいた。美術館で展示されるような大作が普通に売られているとは思ってもみなかったのである。(笑)
そこからは弾けるようにアートを集めるようになった。主に行くギャラリーは清澄を始め、イーストエンド地区(浅草橋、馬喰町周辺)あたり。ここ最近は国内外のアートフェアでの購入や、GEISAIで若手作家の掘り出し物を探したりしている。購入予算は、自身の著書の印税をそのまま充てている。自身が本を「書く」という行為と、アーティストの「描く」という行為を交換しているというイメージだという。現代アートは確かに一見したところ分かりづらいものが多いが、頭をかき回して理解しようとすることが脳には刺激的で、そこが面白みだと思っている。
ビジネスマンであれば、断然アートを見たほうがよい。アートにはこれまでの価値観を変えるようなひねりがあるので、新しいアイデアや面白い発見によって仕事のヒントになる。米国では成功したビジネスマンが現代アートの作品を積極的に買っているが、日本人はまだ少ない。現代アートはおしゃれでカッコイイものであるにも関わらず、もったいないことだと感じる。