若い作家を中心に500点の作品を収集してきたアートコレクターであり、独立キュレーターでもある塩入敏治氏。10年前から欠かすことなく毎回7人の作家をとりあげたギャラリー・レビューを毎週発表している。
「当初銀座を中心に週約30件の画廊を廻っていたのですが、そこで印象に残った作家をピックアップしてレビューを書くと、より作品に対する見方が深まることが分かったのです。さらに7人の作家を7行でレビューする今の手法が最も頭にまとまるという結論に至りました。最近のギャラリーは場所が分散しているので全てを廻りきれていませんが、それでも週末に10件は廻るようにしています」
──現代アートのコレクションを始めたのは90年前後とのことですが。
「はい、観るのがメインだったときはアートを公的なものと感じていたので私的に作品を購入することにはためらいがありました。しかし、一度買ってみると、美術館で見ていたときとは作品の存在感が全く違うのです。その後はパフォーマンス性の強い中国人作家や枠には収まりきれない体験型アートが刺激となって、現代アートにどんどんのめり込んでいきました。そのうちに買うだけでは物足りず、若手作家を集めた展覧会のキュレーションまでやるようになりましたね」
──日本の美術市場についてお聞かせください。
「日本は美術館の動員数は多いのですが、作品を購入する人はまだ僅かです。とりわけ現代アートは難しいという意識がまだまだ強いのが残念です。異質な他者を素直に受け入れられる寛容さが大事ですね」
──作家に対するメッセージをひとこと。
「若いときの豊かな感性を、歳を重ねても持ち続けて欲しいですね。また、コレクター、ギャラリーといった人たちとの共存共栄をうまくやっていく中で作家として成長してほしいと思います」