制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの月乃カエルさんにお話を伺いました。
月乃カエル|TSUKINO KAERU |
今回ご紹介いただく作品は何ですか?
「TOKYO POP CITY」です。
「TOKYO POP CITY」
H1,303mm x W970mm x 2枚組, アクリル絵の具・溶剤塗料・透明フィルム・インクジェット用紙・染料インク・レジン・ラメパウダー/木製パネル, 2021年制作
その作品のモチーフを選んだ理由はなんですか?
東京という街の持つ多面性やポップさを、透明樹脂を使った階層アートで表現しました。
透明樹脂の放つ光沢と輝きの上に各階層が作る影が落とし込まれることで作り上げる、平面と立体の狭間を行く世界は、バーチャルとリアルが入り混じったこの街のポップさに通じるものがあると感じています。
またいつか、この街の魅力を世界中の人たちに感じてもらえますように。
その制作現場を選んだ理由はなんですか?
普段は自宅をアトリエとして使っていますが、この60号2枚組の作品を制作できるスペースはなく、TERRADA ART CONPLEXⅡ にある個展会場を、開催一か月前からお借りして作りました。
広くて静かで最高の制作環境でした。
その制作現場で困っている点は何ですか?
自宅から車で一時間以上かかるのと、制作期間中に東京オリンピックがあり、高速料金が1,000円上乗せされていたとこくらいですが、そのおかげで渋滞知らずだったことも事実です。
その作品に使っている材料はなんですか?
作品のメイン素材となる二液性レジンは、ペベオ社のクリスタルバイオレジンを使っています。
その材料を選んだ理由はなんですか?
二液性レジンは、硬化の際に異臭を放つことが多いのですが、この製品は植物由来の成分を50%含んでいるため、化学系の臭いは抑えられ、快適に作業をしています。
その材料で気に入っている点は何ですか?
気泡の抜けがよく、硬化時になめらかな質感になるのも気に入っている点です。
その材料で困っている点は何ですか?
一般的に二液性レジンは、気温や湿度などの環境によって硬化速度が変わります。困っているところまではいきませんが、季節によって作業タイミングを変える必要があることなどは、気を使う部分です。
その材料はこの作品でどのように使っていますか?
多層化された作品の各階層をレジンでコーティングしています。ラメやラインストーンの装飾パーツを接着するのもレジンです。そのため、作品の艶感、完成度はレジンによって決まります。
その作品に使っている道具はなんですか?
レジンを扱う際には、ボウル、へら、竹串、シリコンマット、調味料入れなど、キッチン用の道具を使うことが多いです。これらは主に100円均一ショップで揃えます。
シリコン鍋敷きなどは、作業時に下に敷くこともありますし、デザインによっては、凹んだ部分にレジンを流して型取ったものを作品に組み込んだりもしています。いまではどんなお店でも、キッチン用品コーナーを通ると自然に足が止まるようになりました。
その作品の制作にとりかかる前に、準備することは何ですか?
特定の作品にかかわらず、作品に組み込むことを想定して、常にレジンパーツを作りストックしています。
レジンでパーツを作るには、硬化速度を考えると最低24時間の時間が必要になります。作品制作中に「こんなパーツをここに入れたい」と思ってからパーツを作ると、それを組み込む作業が翌日以降になり作業が分断されてしまいます。なので、作品の硬化待ちなどの時間を利用して、今後必要になると思われるパーツの制作を進めています。
その作品はどこに注目して観てもらいたいですか?
大きい中にも細密に作り込んでいますので、隅から隅まで、作品の中に入ってしまったかのように、ご覧いただければ嬉しいです。
月乃カエル|TSUKINO KAERU |
■経歴
1963年生まれ
1986年 IT企業に就職、システムエンジニアとして従事
2009年 趣味としてデジタルイラスト制作開始
2014年 独学で3Dアート制作を開始
2019年 前職を退職し、専業作家として活動開始
■おもな出展歴:
[個展]
2014.05 北品川:gallery201
2016.06 原宿:ガレリア原宿
2018.07 原宿:ガレリア原宿
2019.09 北品川:gallery201
2020.08 原宿:ガレリア表参道原宿
2021.04 北品川:gallery201
2021.08 天王洲:TERRADA ART COMPLEXⅡ contemporary tokyo
2021.10 大阪:s.a.s EGAWO
[アートフェア]
2016.07 アートフェア『Independent2016』に出展(大邱特別賞受賞)
2016.11 韓国:大邱 Exco にて『テグアートフェア』に出展
2019.04-10 中国にてアートフェアに出展 (成都、深圳、南京、北京)
2019.08 アートフェア『Independent TOKYO 2019』に出展(タグボート特別賞受賞)
2019.10 アートフェア『unknown asia exchange OSAKA』に出展
2020.12 アートフェア『Independent TOKYO 2020』に出展
2021.03 アートフェア『TAGBOAT ARTFAIR』に出展
2021.04.30-05.03 中国:北京にて、『ART北京 』に出展
2021.06.10-13 中国:北京にて、『JINGART』に出展
2021.08 アートフェア『Independent TOKYO 2021』に出展
2021.11 中国:上海にて、『上海021』に出展
[その他出展歴]
2017.06 国際芸術コンペティション『Art Olympia展覧会2017』に出展(入選)
2020.09 銀座:阪急メンズ東京 tagboat gallery にて、二人展を開催
2021.03-05 日本橋三越前:福島ビルにて、『アート解放区』に出展