アート作品の購入にはいろいろなエピソードが詰まっています。お気に入りの作家との出会いや、作品を購入するきっかけとなった出来事、また作品が届いてからの想いなど。今回はタグボート取扱い作家・Ouma(オーマ)さんの作品をご購入されたガックン@gaku_mesiさまのエピソードをご紹介します。
ガックン@gaku_mesi 30代・男性・東京都在住 |
池袋にて料理やイベントを通して人と人とが繋がれるお店を経営しています。
夢があり広島から上京し、それが叶わなかったことに絶望し自分を見失いました。このままではいけないと、小さなことでも目の前のことを一歩ずつやっていこうとはじめたのが今のお店です。自分の死の瞬間なにが一番幸せなのかと考えた時、お金は生活できるだけあればいいから、たくさんの人達に囲まれて死を迎えられることが幸せなんじゃないかと感じました。恵まれた家庭ではありませんでしたがそのことを前向きに捉え、表面的なものではなく同じような境遇の人達に寄り添えるようなお店をつくろうと決めはじめました。そして2020年、新型コロナの影響をうけました。
お店がなくなってほしくないから支援をしたいとたくさんの申し出がありましたが、こちらがなにもしてないのに受け取るわけにはいかないと全て断りました。
家の中の物を売り、手元に残ったのが10万円でした。その時に絵には力があり活力をもらえるという話を思い出しました。インターネットを通じてではありますが、感じるものがないかとすごく探しました。求めていたものは、表面から捉えたものではなく内面から捉えたもの、そしてその作者の考え方が共感できるもの、というものでした。
アーティストのオーマさんはまさにそれでした。調べるともともと獣医さんをやられていて、その時に亡くなられた動物の飼い主さんの心の癒しになればと、その子の絵を描き手紙を添えて家族に送り始めたことがアートをはじめるきっかけになったと書かれていました。病気を手術や薬で治すだけでなく、別のあり方があるのではないかと捉え世界中を飛び回り活動されていることを知りました。
様々な作品がある中で、ある作品が目に留まりました。
その作品はSOLDOUTでしたが「この人しかいない!」と制作依頼の連絡をしてみたところ、快く引き受けていただきました。そしてそれが偶然手元に残った金額と同じだったことに何か縁を感じるものがありました。
完成まで1~2か月程度かかるということで、お恥ずかしい話ではありますが、お店を長期お休みすることもあり、依頼したサイズと同じサイズのものを紙で作り白紙のまま家に飾り、それを見て出来上がりを想像しながら作品を心待ちにしていました。そして作品ができたとの連絡がありその写真を拝見いたしました。
大変失礼なことではありますが、できあがった作品を見て最初は依頼内容と違う作品だと感じてしまい、そのことを正直に伝えました。
それに対しすぐにオーマさんから長文で丁寧なお返事をいただきました。
新作と旧作では、制作の過程がまったく違うこと。廃材をくみ上げた作品ではなくこの作品のために組み上げたこと。それによりパーツが生きていて、旧作が静的であるならば新作は動的であること。制作に使われた紙の種類が多く、和紙やブラジルのハンドメイド紙をメインに7種類もの紙を使っていること。そして何より、この作品に対しての強い想いをお返事いただいたことにとても感動いたしました。
お話を伺い、そのような強い気持ちでつくられた作品であることが見抜けなかったことを恥ずかしく思うと同時に、嬉しく思いました。「僕自身の気持ちも伝えたい」そう思い、冒頭で書いた制作依頼に至った経緯と共に「ぜひこの作品をいただきたいです!」と伝えました。
オーマさんはそのメッセージを受け取ると「メッセージとても感動いたしまして、力強く前へ進むエネルギーを加えたく、全体的に作品を修正しました」とお返事をいただきました。一度組み上げた作品を、また時間をかけて依頼者の僕により合うように寄り添い組み直していただき、完成した作品は本当により細胞が力強く前に進みたがっている作品に仕上がっていました。
あれから1年が立ち、世界中が今でも大変な状況の中、比較にならない程小さなものではありますが、何度も経営難に立たされ頭をかかえることが次から次へと起こりました。気持ちを落ち着かせるため深呼吸をするように、その度オーマさんの作品を観て気持ちを落ち着かせ、感情的に物事を考えるのではなく今ある目の前のことを大切に見失わずにいよう、強く前を向いていこうと考えられるようになりました。このようなご時世ではありますが、だからこそ冷静に自分を見つめ直すことで、普段では出会わないような人達と巡り合え、お仕事をさせていただく機会も増えました。夢に挫折しても、小さなことでも目の前のことを一つ一つやっていくことが、いずれ大きな一歩になっていくのだと、その活力をいただけたオーマさんに心より感謝しています。改めまして、オーマさんありがとうございました・・!
PS
このエピソードを僕の中だけにしまっておくつもりでいましたが、今少しでもなにか出来ることがないかと考えた時に、オーマさんに背中を押された僕がこのエピソードを通して誰かの背中を少しで押せるものになるのであればありがたいと思い、今回購入者の声として送らせていただきました。
まだまだ駆け出しの僕ですが、オーマさんの作品に活力をいただき、これからも精進していきたいと思います!
「膨張する細胞の声」,Ouma,60x80cm,切り絵(アクリル絵具、和紙)
Ouma(オーマ) |
ガックン@gaku_mesi様
こんなに深い愛情のこもったメッセージをいただけて本当に本当に大感激です!
世界中がこれほど悲鳴を上げる状態になったことは、これまでになかったと思いますが、自分はもともと医療者であり、今はアーティストをやっているので、作品を通じて何ができるかというのをとても考えます。
オーダーいただいた作品は、ブラジルから帰国した直後に創ったもので、現地で購入してきたハンドメイド紙を作品の一部として使わせていただくことができました。しかし、その紙がブラジル産であることは、言わなければ分からないことだと思います。
料理に使われる食材も、言われなければ食べる人には、どこ産か分からないことがほとんどだと思います。しかし、扱う側はそれがどこから来たものか分かっています。今、飲食店はとても大変な状況に追い込まれていますが、食に関わる仕事は、素材が生まれた場所とそれを楽しむ人がいる場所をつなぐ、とても意味のある素晴らしい仕事だと思っています。
まだまだ未熟ではありますが、私も自分ができるあらゆる創作活動を通じ、世界の美しさや目に見えない気配りを想像することの素晴らしさを伝えていきたいと思っています。
自分の創作活動にとって励みになる言葉を、本当にありがとうございます!