タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
作品制作にまつわるあれこれや、普段は聞けないようなお話などが満載です。
毎週更新していきますので、ぜひぜひご覧ください!
アーティスト 坪山斉
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
絵はもちろん、粘土細工や工作、木彫りなど、手を動かして何かを作る造形全般に強い興味を持って接していました。中学を出る頃には、将来は何かを作る人間になる、という思いは自然と湧いてきていました。
美術の道に進む事になったきっかけは?
多くのものづくりの中から美術、その中でも絵画の道に決めたのは、中学生のときに美術の授業で描いた自画像がきっかけとなりました。他の生徒は絵の具を使って描く中、鉛筆だけで描くよう先生に勧められました。
まだ「デッサン」がどういうものかも分かりませんでしたが、鉛筆の黒のみで対象へと迫るその過程は、それまで触れてきたどの造形活動の中でも最もエキサイティングで没頭できるものでした。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなとき?
「TAGBOAT ART FES 2013」です。
ここで展示した作品が、多くの審査員の方の評価を受けてグランプリをいただき、現在の活動へと繋がる大きな機会となりました。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?作品の制作手順など
9:00頃から18:00 頃まで制作しています。できるときは夜も。
作品のコンセプトは、A4の紙を何枚も使いアイディアや思考の断片を出し切り、何日間かかけてそれらをまとめます。その後、PCでの作業に移り、作品イメージのエスキースをしていきます。エスキースでは、特に色の決定に時間をかけています。出来上がったイメージをキャンバスに転写し、アクリル絵具で描いていきます。サイズの大小に関わらず、3〜5点ほどを同時に進めるようにしています。
現在、力を入れて取り組んでいること
より多くの人に自分の作品を知ってもらえるように、コンスタントに制作、発表することはもちろん、作品コンセプトについての検証や考察、深化のためのインプットも大切にしています。最近では、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というプログラムに参加しました。完全に光を遮断した空間の中で、暗闇のエキスパートである視覚障がい者のアテンドのもと、様々なシーンを体験するというものです。これは、私の作品コンセプトの一つである、”視覚(眼)によって識別することについて”のインプットとして参加しました。実際体験した後に感じたものは、圧倒的な闇のなかに0.1%でも光が入り込むと、視覚による識別が開始されるということへの驚きでした。さらに、一時間以上いた暗闇の中から出る瞬間には、目が開けられないほどの眩しさに襲われ、普段私たちがどれだけの光量の中で過ごしているかを実感しました。この闇と光についての気づきは、新たな作品としてアウトプットしていこうと思っています。
将来の夢、みんなに言いたいこと
この時代にとって重要な作品が作りたいです。これからますます人間の能力が試される時代に入る中で、芸術は今以上に必要とされるでしょう。
私は、作品に時代を反映させることの重要性を感じています。そのために、社会とある一定の距離を置いて制作することも今後必要だと考えています。
そして、日本はもちろんのこと、アジアや世界に向けて作品を発表し続けていきたいと思っています。
2018年夏、台湾での展覧会「TOKYO ILLUSION」に出展
1981年宮城県生まれ。
2010年東京藝術大学大学院美術研究科油画技法材料第一研究室修了。
現在福岡県在住。卒業後も数々のアートコンペティションに精力的に出品。
2013年には「タグボートアートフェス」にてグランプリ受賞。作品に描かれる人物には表情がほとんどありません。
「無」の状態に被写体を近づけることによって、微かな色のグラデーションや目の表情から、他人には計り知れない「他者」の想い、不安定さ、感情を無意識に観る者に感じさせます。