タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
額賀苑子 Sonoko Nukaga |
小さいころから絵を描くこと・ものづくりが好きでしたか?
物心ついた頃からお絵描き少女で、紙とペンさえあればずっと絵を描いていました。
何か一つモチーフを決めたらしばらくそればかり描くような凝り性の子供でした。
しかし手先が器用でないため造形は苦手で、粘土や木工ではよく怪我をしたり作品を壊したり失敗ばかりしていました。
美術の道に進むことになったきっかけは?
高校1年生の冬に初めて同時代の具象彫刻を見て、イメージをはっきりと空間に実現させられることに驚き、彫刻をつくる人になりたい、と考えるようになりました。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
大学2年の春に学校の近くにある古い家でグループ展をしたのが最初でした。
ものを既存の空間に置くというだけで、ワクワクしたことを覚えています。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
家にアトリエがあるので、他に用事がない時は朝ごはんを食べて一通り家事を終わらせてから制作に取り組むようにしています。
私は主に粘土を素材として作品を制作しているのですが、作業の段階によって気をつけなければいけないことが違うので、頭の中でぼんやりとタスクを組んでから制作を始めます。
12時になったらお昼ご飯を食べ1時間ほど休憩して、午後は17時頃まで制作します。
根を詰めすぎると辛くなってしまうので、制作期間を長く取り1日の制作時間は短めにしています。
作品の制作手順や方法などを教えてください。
本を読んだり、出かけた先で出会ったものの中からきになる言葉をノートに書き留めておいて、簡単にドローイングなどをして作りたいものを考えます。
実際は形になってみないとどうなるかわからないことの方が多いので、イメージが固まりきらないまま粘土を触り原型を作りだすことが殆どです。
原型がある程度具体的になってきたら中身をくり抜き中空にして乾燥させます。
乾燥しきった原型をペーパーで磨き、窯に入れ800度程度で焼成します。
素焼きの作品の場合はここで仕上げをし、完成させますが、最近はさらに施釉をして本焼成することが多いです。
粘土で作品を作る場合、待つ時間が結構あるので、大きな作品と小品を同時に制作します。
現在、力を入れて取り組んでいること
ずっと継続して、存在や知覚の危うさ、つかみきれなさをどうにか掌握するために人体を主なモチーフとして制作を続けてきました。それはこれからも続けていきたいと考えています。
近年はあまり対外的な活動をしてこなかったので、今後は積極的に作品を外に出していきたいと考えています。
将来の夢、みんなに言いたいこと
今望んでいることは作品を作り続けられる環境と健康状態を維持することです。
たくさんの人や作品や場所に触れられるように元気でいたいです。
自分の中にある虚像に厚みを与えることが私にとっての彫刻なので、そのアクロバティックな転換をずっと続けていければと思っています。
額賀苑子 Sonoko Nukaga |
1989 神奈川県生まれ
2013 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2015 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修士課程卒業
2011 久米桂一朗賞 受賞
2013 安宅賞 受賞
「New Artists 2013」Gallery Jin Projects(東京)
2014 「Art jam 2014」Gallery Jin Projects(東京)
「ジ・アートフェア +プリュス – ウルトラ 2014」スパイラルガーデン(東京)
2015 アートアワードトーキョー丸の内 審査員:建畠晢賞 受賞
杜賞 受賞
「ジ・アートフェア +プリュス – ウルトラ 2015」スパイラルガーデン(東京)
「人像 Part.1 Form〈形態〉須崎祐次×額賀苑子」エモン・フォトギャラリー(東京)
「アートアワードトーキョー丸の内 2015」丸ビル 1 階マルキューブ(東京)
「Duet series vol.3 額賀苑子・天明里奈二人展」Gallery Jin Projects(東京)
「3331 アートフェア 2015 – Various Collectors’ Prizes -」3331 Arts Chiyoda(東京)
2016 個展「not clear」/Gallery Jin Projects(東京)
「3331 アートフェア 2016 」3331 Arts Chiyoda(東京)
2018 「九転十起生 – 広岡浅子像」大同生命保険株式会社 大阪本社ビル(大阪)
「陶×藝×術」FEI ART MUSEUM YOKOHAMA(神奈川)
2019 「内包された温度」東京藝術大学大学美術館(東京)
個展「紗のむこう」Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)
2020 TAGBOAD AWARD 特別審査員賞 小山登美夫賞 受賞
陶やテラコッタを主な素材として用い、実体と表層、意識と無意識、ペルソナとアニマなど相対する2つの価値観を行き来するような造形を目指し制作しています。
人として生きていく上で抱えざるを得ない矛盾やズレへと向かう表現を人体という古典的、かつ普遍的なモチーフを用いて探求しています。
空間や質量の中に歪みやズレを取り込みながら制作することで彫刻という実存感が強いメディアに曖昧さや割り切れなさを含ませようとしています。
鑑賞者が正面を探し、不安定に立ち上がる立体の周りを歩き回ることで、「存在する」ことと「見る」という行為の間に横たわる断絶について思索を巡らせるような表現を試みています。