制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの増田恵助さんにお話を伺いました。
増田 恵助Keisuke Masuda |
今回ご紹介いただく作品について教えてください。
2017年から取り組んでいる『絵の中の絵』という作品の中に意図的に絵や図像を組みこむシリーズと、2018年からの『ghost portrait』という架空の肖像画のシリーズを組み合わせた作品です。
作品の中に絵を組みこむこと(この作品の場合背景の壁)で入れ子の構造にしています。あくまでも架空の肖像画なのでいくつかの画像を組み合わせて、下絵を作っています。
パネルに綿布、油彩 2020年制作 410x318mm
なぜ人物を描くようになりましたか?
もともとマンガやマンガっぽい絵が好きだったので人物がモチーフになりました。キャラクターを描き出すような感覚です。モデルに女性を選ぶのは髪型や髪色を選びやすいのと、多くのマンガのキャラクターのように、体や首の線が細く出来ることも理由にあると思います。
制作現場はどのような場所ですか?
自宅のリビングです。空間が狭いことと、生活感があることは困っているところです。
材料は何を使用していますか?
パネルに綿布、油彩です。油絵具はマツダのSUPERのシリーズをメインに使っています。
油絵具は絵の具の中でも物体として存在感が強いです。アクリルや水彩と比べると強固な印象の表面になります。乾いたときの色の変化も少ないので、描写がしやすいです。
油彩で描くようになったきっかけはありますか?
授業で小学生にちぎり絵を教えているときに油絵の表現を思い出しました。最近はアクリルとテンペラの混合技法で描くことが多かったのですが、より絵の具の質感や量感を出したくて久しぶりに油彩に取り組んでいます。
絵具を扱うコツはありますか?
この作品では油絵具にあまり揮発性由を混ぜずに、やや硬めな状態で顔料を画面にこびりつけるように扱っています。このような描き方だと色が強く出るので、人物の顔や背景の模様がよりはっきりと描写出来ます。
筆はどのようなものを使っていますか?
主に使っている筆はラファエルというメーカーの黄テン毛です。硬すぎず柔らかすぎず、油絵具を扱うのに丁度良い筆です。
この作品はどこに注目して観てもらいたいですか?
近くで見ると絵の具がけっこうボコボコしているので、そういった絵の具の表情も含めて見て頂ければと思います。
制作工程について教えてください。
まずパソコンで写真を組み合わせながらエスキース(下絵)を作ります。
エスキースが完成したら木製パネルに張った綿布に鉛筆で転写し、その後油彩で描写していきます。
制作工程の中でこだわっていることはありますか?
人物が主なモチーフなので顔の描写は特に気を使っていると思います。陰影を抑えてマンガっぽさが少し出るようにしています。最近は洋服に細かい柄があることが多いので、なるべく忠実に再現するようにしています。