制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの姉咲たくみさんにお話を伺いました。
この作品は、奇病に感染した人たちが一気に集まることで、カラダの細胞が原子振動を起こし、最終的にはメルトダウン、さらには大爆発と共に爆心地を中心に重力異常を引き起こすという「廃墟都市」をテーマにした作品です。
その設定はどのように思いつきましたか?
もともとアイデアは頭の中にありました。爆発によって建物が空中に巻き上がるイメージは映画『ツイスター』でヒントを得てから、いつ描こうかと思っていました。
いつもモノクロで仕上げるのですか?
基本的にモノクロで制作するのがほとんどですね。よく「色はつけないの?」と聞かれますが、逆に何で色が必要なんでしょうか。
確かに色があれば世界観をより見せられます。ただ「黒」というのは他の色と違って引力を秘めていると考えています。この宇宙の大部分を占めている暗黒物質、ダークマターに通じるものがあり、つまり黒の中には闇があり、闇の成分にはダークマターがあると思うんです。それこそが「黒」の持つ性質であり、もっとも未知なるものだと感じています。そんな事を考えると、黒という色はとても面白いですね。
この作品はどのような場所で観てもらいたいですか?
基本的にギャラリーでの展示で考えています。誰か展示したいという方がいましたら、ご相談ください。場所は外と汚れやすい場所以外なら展示できます。
制作現場はどのような場所ですか?
実は最近、新しいスタジオに引越しました。新しいスタジオは本棚をメインとしながら、コレクションしている本に囲まれたスタジオにしたいと考えて、本棚は自分で作りました。
好きな本に囲まれた環境なので、とても気に入っています。それも自分で作った空間なので、秘密基地です。
そのスタジオでこだわっていることはありますか?
新しいスタジオは気軽にお客さんを呼べるというコンセプトで空間を作りました。
キッチンはカフェのような空間にしたので、興味があればいらしてください。
作品はどのようなもので制作していますか?
材料はシナベニヤの木パネルと、スノーホワイトのマーメイド紙と、ペンはコピックのペンを使っています。
消しゴムはMONO、下書きの線を消す時はまとまるくんを使っています。
ペンの種類にはこだわりがありますか?
大学で建築を学んでいたので、ドローイングスケッチでよく使っていたのがコピックのペンでした。
もう10年以上、同じメーカーのペンを使っています。
画材の中で他に気に入っているものはありますか?
マーメイド紙とペンの相性は実は最悪なんです。そもそもコピックのペンはケント紙や漫画用の紙で使われる表面にツヤがありますが、マーメイド紙はその反対です。
表面はボコボコしていて、線がかすれる。でもそれが逆にペンでは中々表現できない濃淡や空気感の演出ができます。
相性は悪いけど、画材としては最高のツールです。
下準備はありますか?
下書きと、アイデアを寝る前に何本か映画を見てから作品に取り掛かります。最近はコロナの影響で映画館が休業のため、家でNetflixかAmazonプライムで映画を観るくらいです。
制作はどのような手順で進めますか?
制作は水張りから始まり、下書き、下書きの線をペンでなぞり。全体の塗り作業、通称テクスチャー入れを行い、影入れと細かい調整をして完成です。
※掲載している作品は次期展覧会に出展予定のため、今回販売はありません。
制作にかかる時間はどれくらいですか?
ものによりますが、だいたい10号で1ヶ月、30号で3ヶ月、50号で半年。
100号だと1年はかかると思います。
最近はどのように活動していますか?
さすがに人が多いところは感染の恐れがあるので、近場を散歩するくらいです。常に座っていると、肩こりなど血流が悪くなるので、気分転換も兼ねて歩くことを心がけています。ついでに歩くことで、脳が刺激されてアイデアがまとまります。
今、作家として何か伝えたいことはありますか?
今やれる事を今やるだけです。
特に「コロナだから」という理由で何もしなければ何も生まれないと思っています。自宅にいる時間が多ければ、読みかけの本や、途中でやらなくなったゲームとか。考えてみれば案外、色々とやることが出てくると思います。僕は読みかけの本が2冊残っているので、空いた時間で読もうかと思います。