制作工程を種明かしする「How to Make」インタビュー。今回はタグボート取扱いアーティストの濱田有美さんにお話を伺いました。
濱田 有美Yumi Hamada |
今回ご紹介いただく作品タイトルとコンセプトを教えて下さい。
タイトルは『サボテンでクマを育てる少年』です。
コロナの自粛要請により、閉鎖的な環境にいることで私自身のエネルギーの行き所が無くなりました。私は夜にウォーキングをする様になり、そこで夜桜に遭遇したんですね。こんな時にでも、植物たちは例年同様に美しくそこに存在していました。その姿を見て私は、自分の中に溜まったエネルギーを植物を通して表現したくなったんです。私は以前からサボテンモチーフの作品を何度か作っているのですが、今回はもっとメラメラとした生命力あるサボテンが作れるような気がして、「クマをも育ててしまうサボテン」に挑戦しました。
なぜサボテンをモチーフに選んだのですか?
以前、木のように硬く巨大なサボテンを見た事がありました。その時に私は凄まじい生命あふれるエネルギーを感じたのです。閉鎖的な今だからこそ自分の中に溜まったエネルギーをサボテンと共に放出したいと思いました。
サボテンの色合いが特徴的ですが、何か参考にしたものはありますか?
これまでに見たことがあるサボテンの色は特に参考にせず、「自分の作りたいサボテンの色はどんなのかな?」と色々サボテンの色を調べました。その中で、緑の下からうっすらと見える黄色がとても美しいサボテンを発見したので、その色を自分の中に落とし込み、黄色と深緑を基調とした色で表現しました。
この作品は、どのような場所で観てもらいたいですか?
リビングなど生活環境の中に置いていただき、毎日見てもらいたいです。本物のサボテンとか植物と一緒にお部屋に置いていただいても面白いかもしれません。
他に、注目して観てもらいたい点はありますか?
サボテンからクマが育とうとしてる部分を見て頂きたいです。特に歯を一本一本作ったので、口元を見て楽しんでいただきたいですね。黄色の唾液蜜もポイントです。
普段はどのような場所で制作していますか?
自宅の一室をアトリエにしてます。
そのアトリエで気に入っている点はありますか?
作業机が気に入ってます。小学生の頃に買ってもらった学習机なんですが、とても使い勝手が良いです。引き出しも6つ付いてるので道具も出し入れしやすく、かなり重宝してます。
逆に困っている点はありますか?
自宅の一室なのでアトリエ感が全くないとこです。自宅感満載ですのでアトリエ紹介などで部屋を撮影しても一切絵にならないです(笑)作業机も学習机ですしね(笑)
アトリエの過ごし方でこだわっていることはありますか?
自分の好きな作家さんの作品が印刷されたポストカードや、以前購入した作品等、お気に入りの物や好きなものを置いて制作するモチベーション上げるようにしてます。
作品に使っている材料はなんですか?
樹脂粘土、軽量粘土、アクリル絵具、ジェルメディウム、レジン、ニスです。
絵具はリキテックスが多いです。粘土に混ぜた時に一番浸透率が良くて、発色が綺麗に感じます。特にリキテックスから出てる黒色のチューブのシリーズは他の絵具より値段も高いのですが、その分色が綺麗なので此処ぞという時に使用してます。今回の作品でも黄色の部分は黒色チューブの絵具を使用しました。
どのような手順で使っていますか?
まずは軽量粘土でざっくりとした形を作ります。形が決まったら樹脂粘土や軽量粘土にアクリル絵具を混ぜ込んで色粘土にしたものを取り付けていきます。時には熱湯で軽量粘土を溶かして、そこに絵具を流し込んでそのドロドロ粘土を取り付けたりもしていくのですが、童心に戻った時のようにこの作業がとても楽しいです。軽量粘土に熱湯を入れると粘土がホイップクリームみたいになるので、お腹が空いた時に見ると食べたくなりますね(笑)
その作業で心がけていることはありますか?
粘土を使用する際に、自分独自のオリジナルの使い方で制作する様に心がけてます。作品を見た人は一見何の材料を使ってるか分からないようで、よく「材料は何ですか?」と聞かれます。
この作品に使っている道具はなんですか?
0号の筆、羊毛フェルト用のニードル、陶芸用のニードル、私が保育園の頃から使ってるハサミを使用しています。
この道具を使うようになった理由はありますか?
粘土造形で使うヘラや、フィギュア職人さんたちが使う道具も使ってみましたが上手く使いこなせず、行き着いたのが上記の道具になりました。私は身の回りにあるものでどうにかしていく方が向いてる事が分かりました。
この中で気に入ってる道具はありますか?
保育園の頃から使ってるハサミですね。切れ味が良さそうなハサミを取り揃えた事もありましたが、結果的に保育園の頃から使ってるハサミが一番安心して使いやすいですね。子供用なのでサイズが小さいのですが、その刃物の短いところが粘土との距離感が丁度良くて良いんですよね。
他には、0号の筆の棒部分がとても良い仕事をしてくれます。粘土に穴を開けたり、粘土を伸ばす時に、伸ばし棒の役に立ってくれるので毎回大活躍してくれてます。
この作品の制作にかかる時間はどれくらいですか?
制作時間は大体5日間くらいですね。でも完全に水分が飛ぶまでに1ヶ月以上はかかるので、新聞の上で放置して乾かしてます。
完成したかどうかは、どこで見極めますか?
違和感が無くなったら完成ですね。少しの違和感が残った時は、その違和感が無くなまで徹底的に作り込みます。この時間が毎回とても大事ですね。
その作品を制作しているときはどんなことが頭に浮かんでいますか?
サボテンの事しか考えてなかったです(笑)特に、サボテンの少し透明感を感じるけど深い緑と、間から覗く黄色の色バランスにはかなり慎重に進めてました。惹かれる作品のポイントは色にあると私は思ってるので、毎回色のバランスは大切にしてます。
みんなが真似できる粘土の楽しみ方はありますか?
丸めたり伸ばしたりするだけで面白い形は出来るので、小さな子からでも充分楽しんで作れます。最近だと百均でも売ってるのでお手頃だと思います。
好きな色の絵具を粘土に混ぜ込んだら自分だけのオリジナル色粘土にもなるので、お母さんとも一緒に楽しめると思います。
今、作家として何か伝えたいことはありますか?
この人はいつもどんな事があっても楽しそうに生活してるなぁと思ってもらえる作家でありたいと思っています。というのも、今までならTwitterを開けると展示情報や面白いツイートが沢山あったのに対して、コロナが強まるにつれて、心安らぐ内容のものがほとんど流れてこなくなりました。お気楽モードは逆に控えた方が良いかな?とも思いましたが、私はどんな時でも笑って、出来るだけ今を楽しみたいと思いました。なので一時の時間であってもホッとしてもらえたり、楽しんでもらえる様に、私はSNSを毎回楽しんで掲載する様に努めています。
最近投稿した内容は、過去に作った作品と戦隊モノでお馴染みの爆破シーンと合成させた写真や、民族集落と合成した写真などを掲載しました。普段ならやらない事をこの自粛要請を活かして、楽しい事にチャレンジする事でフォロワーの方も楽しんで下さってるので、私はいつでも楽しませる立場でありたいと思ってます。勿論作品を通しても同じです。
instagramアカウント:@hamada_yumi
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