タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
毎週更新していきます。ぜひご覧ください!
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
絵というかマンガが大好きで、暇さえあればマンガやアニメの絵を模写してました。
小学校高学年になると、マンガ家入門などを読んでGペンや烏口などの道具を買って、マンガ家を気取ってみたりしてましたが、ほどなく自分はストーリーを考えるのが苦手だということに気がついたんですね。(苦笑)
美術の道に進むことになったきっかけは?
マンガ家を諦めた私はイラストレーターになりたいと思い始めました。エアブラシを買って自分なりにリアルな絵を描いていたつもりだったのですが、高校2年の時に訪れた美大受験の予備校の展覧会で見た、まるで本物のようにリアルで迫力のあるデッサンに衝撃を受けたんです。
エアブラシも使わずに鉛筆だけでこんな立体感が出せるなんて凄い!!
この時、本気で美術の道へ進みたい(絶対に美大へ入ろう)と思いました。
イラストレーターになるために美大へ入ったものの、在学中に興味は広告デザインへ移り、卒業すると広告のデザイナーとして就職しました。が、サラリーマンデザイナーは やらされている感が強く 数年で心身ともに疲弊してしまいました。
その後、自分探しも兼ねてアメリカ一周一人旅に出てからは自分の中でも何かが変わり、その時々に面白いと思ったものに遊びとしてのめり込み、それを能動的に仕事にしていくような形で 映像制作、3DCGイラストレーターと、転身しました。
現在の紙幣を使ったアートを始めたのも遊びがきっかけでした。
たまたま見かけた紙幣を使ったおりがみをちょっと試してみたらのめり込んでしまい、ネットで次々新作を発表したところ数ヶ月後には折り方の本を出版することになり、テレビでも紹介されたりもしました。
しかし、その時の世の中の扱いは、飽くまでも面白い余興としてであり、宴会芸のひとつとしての「お札おりがみ」でしかありませんでした。
そしてブームもすぐに去ってしまいました。
そのまま終わらせたくなかった私は、日本円だけでなく世界中の紙幣を使っておりがみを続け、ウェブサイトにまとめました。すると気がつけば世界中の様々なサイトで作品が紹介されるようになり、海外の雑誌への掲載、展示のオファーがくるようになりました。
このあたりから自分のお札おりがみをアートとして意識し、制作するように変わっていきました。
紙的進化論展 2018 / 台湾 出典: 影巷26號
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
紙幣を使ったおりがみ作品を作り始めたのが2006年の終わりで、程なくウェブサイトで発表しました。
その後、半年の間に2冊の折り方を教える本が出版されました。
初めてお札おりがみの個展をしたのは2010年でした。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
時間を区切って、計画的に制作を進められたら良いのですが、性格なのかどうもそうはならず、
ある日は朝から深夜まで調べものをしていたり、
翌日はコラージュの素材づくりで紙幣を延々切り抜いていたり…、
あまりオンオフなく延々と1日中1つのことをしていることが多いです。
紙的進化論展 2018 / 台湾 出典: 影巷26號
作品の制作手順や方法などを教えてください。
個々のお札おりがみ作品に関して言えば、その時のインスピレーションが100%という感じで、
基本的にはどれも即興で折っていて、自分でもどんな作品になるのかわからないまま、ひと折りひと折り進めていきます。
また、普段からお金に関係する言葉を集めたりしています。
I know you are not racist
But You know Money race you.
あなたは人を差別しないかもしれないが、
お金はあなたを差別する。
Who controls the food supply controls the people,
who controls energy can control whole continents,
who controls money controls the world.
食料を支配する者が人々を支配し、
エネルギーを支配する者が国家を支配し
お金を支配する者が世界を支配する。
そんな言葉をベースにイメージを広げて、作り貯めた中からお札おりがみをチョイスして作品にしたり、コラージュの方向性を決めたりして制作していきます。
現在、力を入れて取り組んでいること
まだタグボートでは扱っていただいてはおりませんが、
紙幣を折るおりがみ作品だけでなく、紙幣を切ったコラージュやシャドーボックス的なレリーフ作品など様々な方向性を試しています。
将来の夢、みんなに言いたいこと
311の震災の後、原発をきっかけに 政治の嘘、メディアコントロール、アメリカの属国でありつづける日本、世の中を支配するマネーシステムのからくり、など様々な真実を知ることとなり、まるで映画マトリックスのように虚構の中で生かされてきていたことに衝撃を受けました。
銀行は、自分が持っているお金の中から人にお金を貸し付けているのではなく、
信用創造というしくみによって、ただ数字を書くだけで無からお金を生み出し、人にお金を貸し出すことが許されています。
幸福も不幸も、学歴や経験や可能性も、人の生活は全てお金に左右されてしまうので、みな必死でお金を稼ごうとしていますが、その根本は、そんな詐欺のようなシステムで出来ています。
お金というただの紙に対する人類の狂気とも言える信仰を、しかしいくら否定しようともこの信仰から抜け出て生きることなどできないこと、お金を基準に生きていくしかないという自己矛盾も込みで作品に投影できたらと思います。
静岡生まれ
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン科 卒業
2013年からバンコク、2018年より台北在住
主な展示履歴
2010.07 Folding the World 展( Travel Cafe BLISS / 東京 )
2011.09 ART from the ashes / Support ~ Artists Unite for Japan 展 ( カリフォルニア )
2012.02 DUST AND SCRATCHES 展 ( モスクワ )
2012.02 The Art of Money展 ( パタカ美術館 / ニュージーランド )
2013.07 ムサビズム展( スパイラル / 東京 )
2014.04 ニューアーティスト展( gaffa Gallery / シドニー )
2015.07 Moneylicious Exhibition ( Tadu contemporary Art Gallery / バンコク )
2018.06 紙的進化論展 ( Chung Hsing Cultural Park / 宜蘭, 台湾 )
2019.04 Contemporary Art Salon Spring 2019 ( Auction Center Taipei / 台北 )
2019.07 Paper Money Exhibition ( 東京アーツギャラリー / 東京 )
2019.10 Contemporary Art Salon Autumn 2019 ( Auction Center Taipei / 台北 )