タグボート取り扱いアーティストの皆さんに、インタビューに答えていただきました。
アーティストになったきっかけ、作品制作方法、作品への想いなど、普段は聞けないようなお話が満載です。
毎週更新していきます。ぜひご覧ください!
BENTO-May 27, 2018(熱量702kcal、蛋白質31.9g、脂質25.9g、炭水化物80.9g、塩分10.1g/原材料名:御飯、だし巻卵、塩鮭、なすとこんにゃく炒め、青梗菜、ミニトマト、梅干し、ハム、チーズ、マヨゲーズ、マスタード、サラダ油、みりん風調味料、砂糖、しょうゆ、ごま)2018年 キャンバスにアクリル 35.5×45.5cm
I Love America (ドルナドクマ: クッマグッビ)#22019年 キャンバス、アクリル 60×60cm
みんなで食べよう(82人で:レジェンダリーフレッシュクリームケーキ、40SGD/3268JPY、2018/8/1)2018年 キャンバス、アクリル 45.5×45.5cm
小さいころから絵を描くのが好きでしたか?
好きでした。ガンダムなんかをよく描いていましたね。忘れられないのは、小学校3年生の時に担任になった先生が始めた「がんばりノート」というものです。これは一冊のノートに、算数でも国語でも、そしてお絵かきでも、なんでもいいからがんばってやったことを先生に提出すると、丸をつけてコメントをくれるというものです。さらには一冊終わるごとにみんなの前で賞状を渡してくれる。昔から褒められることが三度のメシより好きだったので猛烈にがんばりました、お絵かきを。それでクラスでダントツ一番になって、あるとき十冊目に到達したんです。そのときの先生のコメントがふるっている。「新宅くんはもう絵は十分がんばったから、今度は苦手な算数をがんばろうね」と。それでもやっぱり絵しか描きませんでしたけど。これを見るわけはないと思いますが、一応。「太田先生、空気の読めないガキですみませんでした。」。
美術の道に進むことになったきっかけは?
高校の時の美術の授業で、正確にはその時にいたクラスメイト。友達を描いてみようという内容だったのですが、彼一人だけ「お絵かき」ではなく、明らかに「デッサン」をやっていた。素人のよくやる輪郭でとらえる描き方ではなく、面でとらえてでこぼこと立体感のあるその絵に、素直に驚き、憧れました。それからすぐに美術部に入り、画塾にも通い、美大へと進むことになって、今に至ります。ちなみにくだんの彼はもう制作などはしていなくて普通の人になっている。まあ、人生なんてそういうものだとはわかっていますが、思い出すたび遠い目にはなります。再び、見てるわけないとは思いますが、「おい若山、おまえのせいで絵なんか描くことになって、いまだに結婚のひとつもできやしねえ!」。ま、八つ当たりもいいとこですが。
初めて作品を発表したのはいつ、どんなときですか?
経歴には入りませんが、高校の文化祭じゃないですかね。生まれて初めて描いた油絵を展示しました。その頃はダリが大好きだったので、なにやらシュルレアリスム的なやつを出したんじゃないかな。親くらいしか見てくれませんでしたが、展示するという経験には変わりないですし、それが原点だとは思います。汗くさい男子校で、先生が二言三言コメントをくれた程度で、そんなに面白いものじゃありませんでしたが、妙な誇らしさを感じたのを覚えています。そんな感覚が中二病のような感じで育っていって、「絵を描く自分は周りの人間とは違うんだ」という思い込みをこじらせて、美術の世界にはまり込んでいったような気がします。
制作する日はどのようなスケジュールで進めていますか?
普段はしがないサラリーマン(Webデザイナー)として働いていますので、平日は出勤前と帰宅後に、1.5時間程度ずつ制作します。そういうわけで、残業は絶対にしません。そこだけは死んでも譲れません。何があってもクビ覚悟で定時に帰ります。だって、どっちが価値ある仕事かと考えたら、明らかじゃないですか。賃労働なんてクソですよ、クソ。本当、毎日ヘドが出る思いで、なんでこんなクソくだらないことをクソ毎日クソ来る日も来る日もクソクソクソクソ……すみません、ヒートアップしてしまいました。賃労働については憎悪しかなくて。えっと、なんの話でしたっけ? そうそう、土日は基本一日中制作しています。出不精ですし。あと、基本的に昼食は食べないので、会社の昼休憩の1時間に、ノートパソコンで作品のエスキースなんかを制作しています。なので、家では基本パソコンは触りません。
謎肉(ネコ:トレンドカラー2016/PANTONE 13-1520 ローズ・クォーツ)2018年 キャンバス、アクリル 35.5×45.5cm
作品の制作手順や方法などを教えてください。
私の作品はすべて食べ物をモチーフにしているので――これは私が美大を卒業したのちに調理師専門学校でも学んだという背景があります――、買い出しに行くところから始まります。たとえば「BENTO」シリーズだと、献立を考えながら、スーパーで買い物。それから料理をして、弁当を作る。出来上がったら20~30枚ほど写真を撮って、それから自分で食べます。作品シリーズによって使う食材はさまざまですが、毎回実際に食べ物を用意して、決して使い回さないというのがポイントです。アートにおける「一回性」や「オリジナリティ」を意識してのことです。その後、写真をもとにPhotoShopで加工して、下絵を作ります。下絵と言ってもラフではなく、画面の比率からカラーから、すべて完全に調整した完成イメージを作ります。なので、この工程が私にとってもっともクリエイティブなのではないかと思います。それをプロジェクターでキャンバスに投影してアウトラインを取り、あとはiPadにその下絵を表示させて、それを見ながら制作を進めます。すでに完成イメージはできあがっているので、つまらない画家がよく言うような「画面と対話する」などということはありません。私にとってアートとは頭の中で想像することが99%であって、絵を描くことは残りの1%、いわば単純作業に過ぎません。あ、すいません。「つまらない画家」とか、すぐに敵を作るような言葉を吐いてしまうのが私の性分で。はい、気をつけます。ええ、友達はいません。
革ベルトや革靴などを食材として料理し、この世界に並存する飢餓と飽食の構造を表象する「レザー料理」シリーズの制作風景。
富裕層への富の集中と求められる再分配の可能性を、ケーキを切り分けるという行為で表現する「みんなで食べよう」シリーズの制作風景。
弁当にあるミニマリズムを、作家自らが料理し弁当を作って食べ、絵画とすることで表現する「BENTO」シリーズの制作風景。
ミンチ肉をクジラやイヌなど食肉がタブー視されている動物形に型抜き、野蛮とは何かを問う「謎肉」シリーズのドラフトイメージと、実際に完成した絵画作品。
ロサンゼルスの街角のホームレスと一つのハンバーガーを共に食べることで、彼らへの理解や状況の共有を試みる「ONE BITE CHALLENGE」シリーズの制作風景。
左は「ONE BITE CHALLENGE」シリーズの作品。右の質問用紙をホームレスの方々に記入いただき、好きなカラーを背景色に、署名を絵画のサインとして使用。
現在、力を入れて取り組んでいること
嫌味な言い方になりますが、常に全力で活動しているので、特に力を入れていることはありません。いつもしっかりがんばってますので、応援よろしく。あ、もう嫌われてますね。それはともかく、一貫して取り組んでいるのは情報発信です。現代では、インターネットにない情報は「存在しないもの」として扱われます。ですから、アーティストとして成功するためには、いかに存在を知らしめるかが鍵だと思います。作家のWebサイトは当然として、Twitter、Facebook、Instagram、LinkedInと、メジャーなSNSはすべて網羅して日々情報発信に努めています。正直、Instagramなんかはどうも性に合わないのでやりたくもないのですが、背に腹は代えられません。特に24時間で自動的に消えるストーリー機能というのが嫌いです。芸術家は「永遠性」を志向してやってるのに、消えてしまう意味がわからない。普通の人って、思いのほか刹那的なんですかね。墓場にまで持って行かんばかりに貯金したりして堅実的なくせに、そこは逆に刹那的。ちょっと理解不能ですね。道理で分かり合えないわけだ。と、脱線しましたが、現代、アーティストとして生きていくためには、一人でも多くの人に認知されることが決定的に重要なんです。知名度は作家としての価値とイコールと言ってもいい。それが現代です。いまだに親には「絵って死んだあとじゃないと高くならないんでしょ?」なんて言れますが、そんな時代遅れの認識だから日本はいつまで経っても芸術後進国なんだバカ野郎などと息まいて軋轢を生んでいます。渡米する前だったか、親戚のおばちゃんに「画家になるならパリじゃないの?」と言われたので、頭にきて「フランスパンに頭をぶつけて死ね」とやり返したら、めっきり疎遠になってしまいました。ま、親戚だって他人ですからね。「中村のおばちゃん、アメリカにもお米送ってね」。だめか。
将来の夢、みんなに言いたいこと
フルタイムアーティストになることです。以前、シンガポールに住んでいた時に出会ったアーティストに私の身の上を話すと、「ああ、パートタイムアーティストなんですね」と言われたんです。日本ではそんな言い方はしないので斬新だなあと感心するとともに、屈辱的だとも思いました。でも、よくよく考えてみれば日本のアーティストなんてどいつもこいつもしがない「パートタイムアーティスト」なんですよね。パートって、日本ではことに辛く、もの悲しい響きがあります。たとえば「パートのおばちゃん」、「お母さんのパート先」とか。決して楽しくも明るくもない。そんなわけで、絶対にフルタイムアーティストになってやると決意を新たにした次第です。今はまだパートの新宅さんですが、近い将来、社員の新宅さんと呼ばれたいですね。こんな時代なので、社員になるのも厳しいのはわかってますが、やっぱりパートじゃだめなんだと思います。だって、結局最後に残るのは社員でしょう?なんの話かよくわからなくなってきたところでお開き、ということで大丈夫ですか?
1982年 広島県生まれ
2005年 九州産業大学芸術学部美術学科卒業
2013年 新宿調理師専門学校調理師本科卒業
現在ロサンゼルス在住
個展
2018年「COLOUR ME WELL」One East Asia Gallery、シンガポール
2016年「コンビニ弁当の山-Time is money.」トーキョーワンダーサイト渋谷、東京
2016年「BENTO」ザ・パレスサイドホテル、京都
2016年「コンビニ弁当の山」静岡市クリエーター支援センター(CCC)、静岡
2015年「カップヌードルの滝」HAGISO、東京
2014年「牛丼の滝」沢田マンションギャラリーroom38、高知
グループ展
2019年「Satan’s Food Court」Art Share L.A.、ロサンゼルス
2019年「11th Annual 50|50 Show」Sanchez Art Center、サンフランシスコ
2019年「Let Me Eat Cake, Too」Blue Roof Studio、ロサンゼルス
2019年「TOCA 2019 Southbay Festival of the Arts Juried Art Show」Ken Miller Center、ロサンゼルス
2019年「KITCHEN」ART Space ZERO-POINT、東京
2019年「Contemporary takeout」Touchon&Co Gallery、ロサンゼルス
2018年「Art Gemini Prize 2018 Finalists’ Exhibition」Menier Gallery、ロンドン
2018年「SINGAPORE INTERNATIONAL ARTIST FAIR」Suntec City、シンガポール
2018年「Artmore Award Exhibition」弘重ギャラリー、東京
2017年「UMU-Q -九州産業大学芸術学部優秀作品展」上野の森美術館、東京
2017年「ミニUMU-Q」ターナーギャラリー、東京
2017年「UMU-Q -九州産業大学芸術学部優秀作品展」九州産業大学芸術学部アートギャラリー、福岡
2016年「Independent TAGBOAT ART FES」ヒューリックホール、東京
2016年「a3 project / season 2016」MATSUO MEGUMI +VOICE GALLERY pfs/w、京都
2016年「EN / Sawaman Gallery Room 38 exhibition」Verkligheten、スウェーデン
2015年「退廃藝術展2015」DESK/okumura、東京
2015年「美術食堂」ART SPACE ZERO-ONE、大阪
2013年「POSSIBLY TALENTED Vol.3」THE blank GALLERY、東京
2013年「第6回 ガキグラ展」ギャラリーおいし、福岡
2012年「YOUNG ARTISTS JAPAN Vol.5」東京デザイナーズウィーク(TDW)内、東京
2004年「師寿睦仁展」LAPIN ET HALOT、東京
2000年「大覚展」NHKギャラリー、福岡
受賞・入選
2018年Art Gemini Prize 2018 ショートリスト選出
2018年Artmore Award 井崎賞
2015年TWS-Emerging 2016 入選
2015年CCC展覧会企画公募 New Creators Competition 2016 入選
2015年トーキョーワンダーウォール公募2015 入選
2015年ワンダーシード2015 入選
2013年第2回 宮本三郎記念デッサン大賞展 入選
2005年別府アジアビエンナーレ2005 入選
2002年第34回西日本美術展 入選
2001年第37回福岡市美術展 福岡市議会議長賞
アートフェア
2018年Affordable Art Fair(シンガポール)
2018年ART FAIR ASIA FUKUOKA 2018(福岡)
2018年Art Jakarta 2018(インドネシア)
2018年Art Gyeongju 2018(韓国)
2018年ART FORMOSA 2018(台湾)
2018年Busan Annual Market of Art 2018(韓国)
書籍/メディア
2019年Murze Issue Six(Murze)
2018年Funan “Funan2.0”-smart living at its best.Welcome home. (CM出演)
2018年Manulife Singapore “Godzilla” -it’s Good To MOVE (CM出演)
2016年トーキョーワンダーサイトアニュアル2016(公益財団法人東京歴史文化財団)
2015年ISE NY Artist Registry 2015 掲載