
早川温人

プロフィール
略歴
2001 栃木県生まれ
2022 桐生大学短期大学部アート・デザイン学科卒業
2024 武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業
2026 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了
主な個展
2020 早川温人展「しわをみる」(西門-SAIMON-/足利市)
2021 早川温人展(PENSEE GALLERY/桐生市)
2024 早川温人展(Gallery b.Tokyo/中央区京橋)
受賞・入選
2024 Idemitsu Art Award2024 入選
その他
2022 写実画家育成助成金 一般財団法人 はなう美術振興財団(ホキ美術館内)
2024 月刊美術 特集「ネクストブレイク」掲載
早川温人は、対象を自らの眼で見て描くのではなく、「フラットベッドスキャナ」という機械の眼を通して知覚の外部化を行い、それによって得られた「デジタルデータ」や「プリント」をモチーフとすることから始まります。この出力されたプリントそのものを、すでに一つの「絵画」であると認識し、現実の対象物ではなく、このプリントを現実の世界よりも信頼すべき「絵画の絶対的なモチーフ」として扱う。
スキャナが読み取った光の座標や、機械的な走査線(ストライプ)といった情報をたよりに、キャンバス上に油絵具で置換していく。そうすることで、作家自身の主観や手癖のようなものを一度手放し、客観的な「像」を立ち上げようとしている。しかし、いかに機械的な正確さを模倣し、自己を没却しようと試みても、生身の身体には不可避的な「ズレ」が生じる。
早川の作品の本質は、この「機械になりきれない身体のもどかしさ」とそれを許容することによって自身が絵画を発生させることにあります。物質的な実体をデジタルデータに変換、プリントアウトをすることで光学的な絵画の発生を起点とし、自身が設けたルールを介在させることで「情報の劣化」とその蓄積が行われていきます。その先にこそ、現代の絵画の発生方法として最も生々しいリアリティを見ることができると考えます。

作品を作り始めたのはいつ頃ですか?
作品として本格的に制作を始めたのは高校3年生の頃からです。
自分の人生を価値あるものだと思いたいがために一つの能力を身に付けたかったのだと思います。
絵が何かを知らない私は形を正確に描写することが私に価値を与えてくれると考え、
とにかく高い描写精度を追い求めていました。
鉛筆画であれ油彩画であれ、対象の写真を撮り、
それをいかに忠実に描き写すかということに注力していました。
その結果として得られる「高い伝達能力」が周囲からの高い評価に繋がり、
大学の学部時代では写実画家育成助成金を受けるなど、
当時の私にとってそれが「絵を描いていい理由」、つまり制作の大きな拠り所になっていました。

アーティストを目指すようになったのは、どのような経験や思いがきっかけでしたか?
私の興味の指向性は大抵自分自身に向けられています。
私は自分の正体を知りたいという感情を持っています。
その中の一つに「見る」という行為が含まれており、
その哲学が内包されたフィールドがアートの世界でした。
私は自己中心的にこの分野を研究し、その成果を一つの正解として受け入れたいと考えています。
自分の感情を正誤の判断材料として使用し、正解への規則性を探っていきますが、
この私の正体を探る行為は「梵我一如」という言葉があるように、
他者を理解する行為でもあるのだろうと考えています。

現在の作風に至るまで、どのような試行錯誤を重ねてきましたか?
純粋に、対象の形を正確に捉え、描くこと自体には大きな喜びを感じていました。
しかし制作を続ける中で、徐々に大きな葛藤も抱えるようになりました。
「結局のところ、自分は写真の劣化版しか描けていないのではないか」という思いです。
カメラという機械が捉えた完璧な像に対して、生身の人間が手で描く以上、
どうしても精度は落ちてしまいます。
写真の劣化しか生み出せない私が、わざわざ絵を描く意味はどこにあるのか。
そこに意味を見出しにくくなったこの行き詰まりと葛藤が、
現在の「機械の眼」を通したアプローチや、
「人間の身体が介入することで生じるズレ」を肯定する作風へと繋がっています。

作品に共通するテーマやコンセプトについて教えてください。
私の作品の本質は「機械になりきれない身体のもどかしさ」と、
それを許容することによって自身が絵画を発生させることにあります 。
私は、出力されたプリントの上に直接油絵具を置いて調色し、
それをキャンバス上の「同一の座標」へ配置するという厳密なルールを自分に課しています。
光学機器が持つ正確な情報を、精度の劣る「人間」が分解し、抽出する。
いかに自己を没却しようとしても、絵具の量のムラや座標の微細なズレが不可避的に生じます。
この行為によって生じる情報の劣化と蓄積、そして「ズレ」こそが、
新たな絵画を発生させるというのが今の制作のコンセプトです。

作品のアイデアは、日常のどんな出来事や風景から生まれることが多いですか?
日常にある三次元の存在が、二次元の「座標」と「色」に固定される瞬間に興味があります 。
例えば、花瓶やそこに挿された生花などごくありふれたものを、
スキャナに直接当ててスキャニングするという物理的な行為から作品はスタートします。
現在までに親族の身体や、花瓶、生花などをスキャニングしてきました。
いずれも数十枚から数百枚のスキャンを重ね、
その中から一枚を選択して絵のモチーフを決定しています。
この行為は他のアーティストにとってのドローイングやエスキースなどに該当するのかもしれません。

作品を見る人に、「これを感じてもらえたら嬉しい」というポイントを教えてください。
一見して写真のようだと感じてもらえたら自分の作品は機能していると思います。
なぜなら、私にとって「写真」は完璧な絵画であると考えているためです。
遠目には写真のように見えつつも、近づいて画面を見たときには
絵の具の物質的な密度を見ることができるはずです。
これは、光学的な配列の精密さではない、
絵の具を用いた密度の精密さを感じることができる油彩画の優位性を提示しています。
今回、「tagboat Art Fair 2026」に出展される作品について教えてください。
今回出品する作品はいずれも、「フラットベッドスキャナ」によって出力された二次元情報を基に、
油絵具を用いて制作しています。
スキャナが読み取った光の座標や、センサーバーが動く過程で生じる走査線を利用して、
客観的な「像」の立ち上げを目指しています。
いかに機械的な正確さを模倣しようとしても、生身の身体で描く以上、
不可避的なズレがこぼれ落ちてしまいます 。
私はそのズレを許容し、スキャナを用いた光学的な絵画の発生を起点として、
人間の身体が介在したことによる「情報の劣化とその蓄積」を、
現代の絵画の発生方法として提示します。

今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
現在のペインティングは一見するといわゆる抽象絵画に属していると思われますが、
その制作プロセスには「光学的な根拠」を得た上での具象的な行為が内包されています。
今後もこの「光学的な根拠」が私にとって重要な情報であることに変わりません。
その上で、大学院を修了するまでの間に「形を描くこと、描かないこと」の葛藤を深く経たことで、
私の中でようやく形を描いてもいい理由を得ることができました。
そのため、今後の表現には画面に具象的な要素が残されたペインティング作品が増えていく
と予想しています。
また、今後はペインティングのみならず、「絵画の発生」という同一の目的を持ちながらも、
伝統的な絵画とは異なるメディアを使用した作品への展開にも挑戦していきたいと考えています。

4月24日(金)ー26日(日)開催:tagboat Art Fair 2026

「tagboat Art Fair 2026」
会期
2026年4月24日(金)ー26日(日)
詳細日時
・Preview -会場限定販売期間-
4/24 (fri) 16:00 – 20:00
・Public View -オンライン同時販売-
4/25 (sat) 11:00 – 19:00
4/26 (sun) 11:00 – 17:00
※3日間どなたでもご来場可能です
会場
東京都立産業業貿易センター浜松町館 展示場2階
〒105-7501 東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
JR/東京モノレール 浜松町駅(北口)から徒歩5分
ゆりかもめ 竹芝駅から徒歩2分
都営浅草線/都営大江戸線 大門駅から徒歩7分
チケット代
1500 円(会期中再入場可能)
※障害者手帳のご提示でご本人様、付添いの方1名まで無料
※学生証のご提示でご本人様無料
※小学生以下のお子様は無料