
緒方ちか

プロフィール
アーティスト/俳優
1982年 大阪市生まれ 東京都在住
2021年のコロナ禍から独学で制作を開始。現在はギャラリーや百貨店で活動。
都市に息づく日常の風景と、そこに内在する秩序や機能美に焦点を当てています。
コンクリートの構造物、複雑に張り巡らされたインフラ、光を放つ建物の窓は無機質に見えながらも人々の営みや感情が積み重なり、都市という生命体の一部として機能しています。
時に忘れ去られがちな標識などは安全や生活を支える「見えない対話」の痕跡。
命なき人工物が織りなすパターンにも社会の躍動とその中で生きる私たちの存在を重ね、静かに脈打つ都市の鼓動を作品に捉えることで見慣れた風景に少し違ったまなざしを向けるきっかけになればと思います。
<個展>
2024年 「ここに、いる」大丸梅田店ART GALLERY UMEDA 企画 GALLERY龍屋
<二人展>
2024年 「Cross&Flow」緒方ちか×HANNAふたり展 三軒茶屋アトリエ@ツメアワセ
<アートコンペ>
2022年 ZEROTEN2022 -TOKYO(1位 GALLERY龍屋/東京)
2022年 TATSUYA ART COMPETITION 2022(2位 GALLERY龍屋/愛知)
2023年 ZEROTEN2023 -OSAKA(3位 ART GALLERY UMEDA/大丸梅田店)
TATSUYA ART COMPETITION SUPER(3位 GALLERY龍屋/愛知)
2025年 Independent Tokyo 2025(特別賞・オーディエンス賞 TAGBOAT)
2023年 ZEROTEN2025 -OSAKA(オンラインギャラリー賞 ART GALLERY UMEDA/大丸梅田店)
<企画展>
2022年 ZEROTEN SQUARE(GALLERY龍屋/東京)
2023年 Tatsucon Selection 2023 -Osaka- (ART GALLERY UMEDA/大阪)
GALLERY龍屋 選抜作家展 タツコレ2023(ヒカリエCUBE/東京)
2024年 ZEROTEN SQUARE 2024 (GALLERY龍屋/愛知)
<特別展示など>
朗読✕音楽なかがわ・なかがわ「虹とさよならカエルのおはなし」舞台美術展示
演劇企画heartmoreneed 短編映画「笛が鳴ったらたすけて」メインビジュアル

作品を作り始めたきっかけはなんですか?
コロナ禍で仕事も俳優活動もすべて止まってしまいました。
それまでずっと走り続けていたので、強制的に立ち止まることになったんです。
最初は戸惑いましたが、ようやく自分を振り返る時間ができました。
振り返ってみると、忙しさを言い訳に嫌なことを飲み込んできたんじゃないかと気づいたんです。
さらに家にいる時間が長くなる中で、置き去りにしてきた自分のことや足りない部分とも向き合うことになって。
受け入れていくうちに、今度は不思議と前より健全に腹が立って力が湧いてきたんですよ(笑)。
そのとき、なぜか部屋の中にあるものを描き始めました。
なんとなく手に取ったiPadのメモ画面に。絵なんて高校の授業以来だったので、自分でも驚きました。
でも描いてみたら、それまで内側に溜まっていた力の向きを、違う形に変えられる感覚があったんです。
言葉では言えなかったことが、カタチになっていくような。
そこから初めて画材店に行って、絵具を買いました。あれが今につながる最初の一歩だったと思います。

現在の作風に至るまで、どのような試行錯誤を重ねてきましたか?
制作を始めた当初、最初にコンペに出した作品は
「舞台セットのない演劇の中で、自分が演じた役が見ていたであろう景色」
を描いたものでした。
俳優としての視点から、役の内面に広がる風景を可視化しようとしたのが出発点です。
そのテーマを続けるべきか考えるなかで、次第に役の視点に限定しなくても景色そのものがすでに尊く、
美しいのではないかと思うようになりました。
そこには自分を含むあらゆる人の日常や特別な時間が重なっていると感じたからです。
そうして日常をあらためて見つめるようになると、まちづくりの中にも自然と目が向くようになりました。
標識は人がぶつかり合わずに生きていくための静かな約束のように見え、
点字ブロックは思いやりが足もとに置かれたかたちのように感じられます。
安全なまちを整える営みもまた、世界という大きな身体を保つ行為のように思えるようになりました。
こうした視点の変化が、現在の制作へとつながっています。

作品に共通するテーマやコンセプトについて教えてください。
管のように巡る道路や電線、代謝するように更新され続ける建物や構造物。
その営みが都市を生かしているのだと思います。
私たちと同じように循環しながら存在する都市構造の美しさに惹かれています。
無言で大きな人工物の佇まいを見つめながら、余計な雑音を忘れ、内側と対話する時間。
そこには、健やかに生きるヒントが刻まれた誰かの仕事があると感じています。
私は、都市をひとつの「身体」としても捉えています。

作品のアイデアは、日常のどんな出来事や風景から生まれることが多いですか?
例えば「献血」もそうでした。
本当に日常生活のどこにあるかわからないくらい突然現れます。新宿都庁下で初めての献血を受け、
その後行ってみたかった地上202mの都庁展望台に上がりました。
血が抜けすぎたのか急にクラっと貧血気味になり、しゃがみ込みながら街を見下ろしていると、
張り巡らされた道や電線たちが血管や神経に見えてきました。
「あ!まちもわたしも巡っている」みんな一緒だ、生まれて流れて繰り返し代謝する!!
土木建築インフラストラクチャー!と。

作品を見る人に、「これを感じてもらえたら嬉しい」というポイントがあれば教えてください。
人が好きです。現実世界ではたくさん話もします。
でも、作品ではあえて人を描かないことで、その存在を少しだけ感じてもらえたらと思っています。
見つめ合うのではなく、並んで同じ景色を見ているような感覚でありたいです。
それは、演劇の体験ともどこかつながっているのかもしれません。
舞台上で役者が役として見ているであろう景色を、観客がその佇まいや目線から想像し、
同じものを見ようとする感覚。
その距離感にどこか似ている気がしています。
制作に入る際、必ず行うルーティン(音楽、飲み物、時間帯など)はありますか?
作品にもよりますが、夜の絵は夜の方が進むし、昼の絵は昼の方が描き進めるのに合っている気がします。
温かい飲み物を淹れてヘッドホンで曲を流しながら描き始めようとしますが、気がついたら飲み物はひえひえに冷めて
音楽も終わって無音になっている…と言うことがしはしばあります。

今回、「tagboat Art Fair 2026」に出展される作品について教えてください。
これまでは、そのとき心に浮かんだものを勢いのままに描き、さまざまなサイズで制作してきました。
今回は、どうしても惹かれてしまう“空”への気持ちをあらためて大切にしながら、
ふとした瞬間に見上げてほしい空と、物言わず静かに受け止めてくれる人工物を描いています。
それぞれは一つでも成立する作品ですが、いまは一枚だけで完結するのではなく、
並ぶことで生まれる呼吸や関係性を見つめてみたいと思うようになりました。
色とりどりの作品たちは、並ぶことで小さな記憶の集まりのような景色になります。
制作の過程で色の冒険をし、ひとつずつ増えていく景色を見ることも自分にとって新鮮で嬉しい体験でした。

今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
今後は、本の装丁など、物語にそっと寄り添う表現をしてみたいと思っています。
物語には台詞にならない逡巡の間や、登場人物の心情を映す風景があります。
私はこれまで、都市の景色や人工物のなかに、人の気配や静かな対話の時間を重ねてきました。
その視点は物語の世界ともどこかでつながっている気がしています。
物語を読み終えたあと、ふと装丁を見返したときに、その世界の時間や感情が静かによみがえる。
そんな存在でいられたらと思っています。
もう一つは、これまで日本の身近な風景を描いてきましたが、もし海外など異なる土地を歩いたら、
自分はどんな空気を感じ、何を見つめるのだろうと想像することがあります。
環境が変わっても風景の奥にある人の気配は大切にしたいです。
4月24日(金)ー26日(日)開催:tagboat Art Fair 2026

「tagboat Art Fair 2026」
会期
2026年4月24日(金)ー26日(日)
詳細日時
・Preview -会場限定販売期間-
4/24 (fri) 16:00 – 20:00
・Public View -オンライン同時販売-
4/25 (sat) 11:00 – 19:00
4/26 (sun) 11:00 – 17:00
※3日間どなたでもご来場可能です
会場
東京都立産業業貿易センター浜松町館 展示場2階
〒105-7501 東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
JR/東京モノレール 浜松町駅(北口)から徒歩5分
ゆりかもめ 竹芝駅から徒歩2分
都営浅草線/都営大江戸線 大門駅から徒歩7分
チケット代
1500 円(会期中再入場可能)
※障害者手帳のご提示でご本人様、付添いの方1名まで無料
※学生証のご提示でご本人様無料
※小学生以下のお子様は無料