マシューマローはもともと、沢山の色を均一的に重ねた「プリントされたようなアナログ作品」を制作していました。それがモノクロの作風へと変化したきっかけは、アーティスト業と両立して取り組むイラストレーターの仕事との違いを意識したことでした。
イラストレーターとしてデジタルで描く絵は、色数やコストなど、様々な制約が常に伴います。結果として2~3色のベタ塗りでイラストを仕上げることが多くなりますが、そうして完成した作品をSNSの画面越しで見ると、デジタルとアナログの境目も見分けがつかなくなっていました。
そうした中で、マシューマローはアーティストとして「画面越しでも伝わる表現」を模索し始めます。
表現を模索して立ち返ったのは、幼少期に夢中になった1920〜70年代のクラシックカートゥーンでした。アニメのなかでは、写実的な背景は動かない一方で、フラットに塗り描かれたキャラクターは躍動します。その対比に「世の中は変わらない。だからこそ自分が動くしかない」というメッセージを感じ取り、その感覚を自身の作品として表現するためにモノクロへと移行したのです。
そうして描かれた作品では、背景に描かれる建物や車、フォントに至るまで、マシューマローがこだわる「世界観」が表現されています。
マシューマローは以前より、キャラクターの輪郭線について「生と死を分ける線である」という考えを持っています。輪郭を持つキャラクターは“生”を与えられ、物語を動かしていく主体なのです。一方で背景や動かないものには輪郭を与えず、時間に固定された存在として描いています。
その対比によって、画面上には「今まさに生きているもの」と「変わらずそこに在り続けるもの」が同居します。そして、キャラクターが手に持つモノやこれから動き出す要素に輪郭が描かれることで、そこから新しい物語が展開していく可能性を示唆しているのです。
モノクロームの世界に浮かび上がるキャラクター。その表情や仕草はシンプルでありながら、観る者の想像力を大きく刺激します。
マシューマローは「私はこう思って描いたけれど、そういう見方もあるのね」と鑑賞者と発見を共有できるように、あえてストーリーに余白を残して制作していると語ります。作品の前に立つと、観る人それぞれの物語が始まるのです。
現在のアートシーンの流れの中で、マシューマローは自らを「ボーリングで言えばガーターかもしれない。でも、なければ困る存在」とユーモラスに語ります。
その言葉の裏には、制約のない中で表現を模索し続けるアーティストとしての純粋さが感じられます。モノクロの画面に浮かぶキャラクターは、懐かしさと新鮮さを併せ持ち、観る人の想像力を引き出して心の奥に物語を芽生えさせます。マシューマローが紡ぐ物語の余白から、ぜひその先を想像してください。
マシューマロー / Matthew Mallow
現代アーティスト、イラストレーター。
日常の経験や感じたことをもとに、ヤギをモチーフにしたキャラクターを描く。
1930年代のクラシックカートゥーンは、差別・政治・宗教といった問題をブラックユーモアやギャグで表現し、誰もが知るキャラクターに代弁させていた。
マシューマローも同様に、現代の社会問題をユーモアと可愛らしさで描き出す。
「救いがある」という希望は生きる上で不可欠であり、ヤギのキャラクターには「どんな日常でも良い日だと思えるように」(G.O.A.T.)というメッセージが込められている。
<個展>
2023年
「グルテンのグル展」(DDDART 凪)
「NO SHIT」(木下名古屋)
「グルテンのグル展 vol.2」(代官山 蔦屋書店)
2024年
「Comedy」(博多阪急)
2025年
「Archive the Future」(Ristorante AO 逗子マリーナ)
「Drip trip」(Eric Rose Cafe 表参道)
「Where wonders hide」(Art Gallery T)
他展示歴多数
開催期間:2025年9月24日(水)~30日(火)
営業時間:10:00-20:00
*最終日は18時終了
会場:博多阪急 1階MEDIA STAGE ※博多駅直結
〒812-0012 福岡県福岡市博多区博多駅中央街1−1
入場料:無料
オンライン販売:2025年9月24日(水)12:00より販売開始いたします。
※オンライン販売は会場がオープンした初日2時間後の12時より開始いたします。
※作品の購入は、各作家サムネイル画像から商品ページへお進みください。
※出品作品は会場でも展示・販売しております。会場とオンラインでの購入が同時となった場合は、会場の購入を優先させていただく場合がございます。何卒ご了承ください。